これは海外展開に慣れていない、日本側の悪影響もあります。現地に送り込まれたエース級人材は、当然のごとく期待された100%の成果を目指します。日本側も日本で成功してきた通り100%の成果を期待しています。しかし、急に海外で日本と同等の成果をあげることは難しく、日本側の期待通りの成果は上がりません。日本側ではエース級人材が空けた穴を埋めるのも大変で、国内売上が落ちたり、マネジメントがスムーズにいかなくなったり、歯車が狂い始めます。そんな焦りもあり、さらに日本側は早期の成果をだすようにプレッシャーを強めます。

 本人もプライドや自負があるので、成果を出そうと懸命に頑張りますが、日本との溝は増すばかり。予算も期待も多く掛けられているプロジェクトのため、プレッシャーはさらに強まりますが、エース級人材は弱音も吐かず、全て自分の責任、上手くいっていないのは自分の能力が足りていないせいだと、どんどん自らへの負荷を強めていきます。

 日本側へは、やります、成果を出します、と言い続けるものの、徐々に日本側からの評価も下がりはじめ、本人は精神的にも肉体的にも疲れ果ててしまいます。日本側では、エース級で無理なのであれば、自社の海外展開は無理だったのだと全てを諦めてしまいます。

 このような失敗は本当に残念な結果ですが、同様の事例を数多く聞きました。また、現在もこのような体制で海外展開に取り組まれている企業も多くいらっしゃるかもしれません。

 では、5年未満の若手を送り込んだ場合はどうでしょうか?

 本人の感じるプレッシャーは強いですが、日本側とすればエース級人材と比べればコストも安く、日本側の影響も少ないため、成功すればラッキー、程度に経営側も考えています。

 日本側の同僚や先輩社員も、エース級人材であれば、任せっぱなしであれこれ口出しもしなかったのですが、若手社員であれば、海外には興味もあるので、色々と気にかけてくれます。

 若手社員は知識も経験も十分ではないため、日本側社員にもよく質問をします。ここで、違いとして表れてくるのが、エース級人材の場合は、役員や上層部とのやり取りや、部下への指示だけだったのに対し、若手社員の場合は社員間でのコミュニケーションルートが作られる点です。日本側社員も現地情報や知識を得られるため、海外と日本でのビジネスの仕方や違いも徐々にわかり始めます。