マイナンバーの活用に必要な
「記入済み申告制度」の導入

現行では、カードリーダーが必要なe-Tax。17年1月をめどに新たな認証方式の導入を行う予定だ

 マイナンバー制度の施行を前に、企業のマイナンバー対応実務に関するセミナーが多く開催されている。まずは、マイナンバーの管理を法令に従って実施することが最大の関心事である。

 筆者は、実務の対応の先にある「マイナンバー制度をどう活用していくか」という点に、より大きな関心がある。これまで、マイナンバー制度を国民利便の観点から活用すべきだ、莫大なコストと手間をかけて導入する以上、それを上回る国民の利便性の向上や行政コストの軽減を目標にすべきだ、ということを主張してきた。

 その代表例の1つとして、「記入済み申告制度」の導入がある。これは、税務当局が、雇用主や金融機関などから提出された情報、たとえば源泉徴収票や支払調書などの法定資料の記載内容である、所得金額や源泉徴収額などを予め申告書に記入して納税者に送付し、納税者はその内容を確認、必要に応じ修正して申告が終了するという制度で、納税者サービスの一環として行われている。

 下図は、スウェーデンの税務当局から入手した「記入済み申告書」である。

 これを見ると、税務当局から送付されてきた申告書には、給与、利子所得、配当所得などと並んで、支払った国税や地方税、税額控除額などが記入され、最終的には納税者の税の過不足額(図では還付額)まで計算・記入されていることがわかる。

 このようなサービスの導入は、北欧諸国だけではなく、英国など他の欧州諸国にも広がっている。