59資格の取得状況を入力
学生時代に取得できない資格も掲載
「有利に就職活動を進めるためには、どのような領域で、何種類の資格を取得したらよいでしょうか」――。
先日、W大学学部2年生のAさんから受けた質問である。「自分のやりたいことで、専門を極める中で、資格を取りたくなったら取ればよいと思いますよ」と回答したが、信念をしっかり持っているAさんがその質問をしたことを意外に思い、なぜ、そのような疑問に思ったのかを問いかけた。すると、予期せぬ答えが返ってきた。
「インターンの申し込みをしているのですが、エントリーシートに、とても多くの取得資格の入力欄があり、これは、取得資格の内容や数で選別をしているという企業からのメッセージだと思うのですよね」
日頃から、説明されたり示されたりした内容から、伝えたいメッセージを読み取る演習プログラムを展開している私からは、なんとも頼もしい見解であったが、企業が伝えたいメッセージと、学生が受け取るメッセージとにギャップが生じている嫌な予感がし、エントリーシートの実物を見せてもらうことにした。
それはなんと、経済、医療、情報処理、コンピュータなど6つの領域にわたり、59もの資格名が一覧となっており、取得した資格にチェックを入れるエントリーシートだった。それも、大手の人材採用広告・選考支援企業により、広く企業に提供され、多くの学生の、インターンのエントリーなどに使用されているシートである。中には公認会計士や一級建築士など、取得には実務経験が不可欠な資格も掲載されている。エンベデッドシステムスペシャリストやJavaプログラミング能力認定など、取得者が比較的希少な資格も記載されている。
読者の中には、「あらゆる資格を網羅しただけでしょう。学生は取得資格をクリックするだけなので、シートに多数の資格が掲載されていることは、むしろ便利で学生にとって親切なことなのでは」と感じる方もいるかもしれない。確かに、選考支援企業の実務担当者が、汎用のシートとして、企業のニーズの最大公約数を満たすシートとして作成したものだろうと容易に想像できる。
しかし、私は、このことは、トンデモ人事部がもたらした管理偏重症候群の重篤な症状だと思わざるを得ない。