独バイエルの子会社で、農薬や種子のカテゴリーで世界第3位の実績を持つバイエルクロップサイエンス。同社の渉外担当役員のベルント・ナーフ氏に、世界の農業情勢や事業戦略や食の安全・安心の確保などを聞いた。(「週刊ダイヤモンド」編集部 千本木啓文)
――最近のバイエルクロップサイエンスの業績と事業環境はどうですか。2014年のEBITDA(利払い・税引き・償却前利益)は23億5800万ユーロで、売上高に占める構成比(EBITDAマージン)は25%でした。好調路線を維持できますか。
14年までの3年間は、農薬などの需要が伸び、我々の業績も大変好調でした。14年の売上高では、10%以上の伸びを達成しました。
しかし、15年の世界の農薬市場には縮小傾向が見られます。特に、北米でトウモロコシの生産面積が減ったことや、南米各国で害虫発生が少なかったことなどから、殺虫剤などの売上高が減少したことが響いています。世界市場の動きと比例して、当社の成長も減速しており、第2四半期までの売上高の伸び率はわずかでした。ただし、収益性については競合他社と比較しても、引き続き良好な水準です。
一方で、近年は、農薬や生産性の高い種子の研究開発に巨額の投資が必要になっていますから、研究開発費を確保するために収益性を堅持していくことが大切です。世界の食料問題の解決に貢献するためにも、農業技術のイノベーションは不可欠。今後、数年間で、毎年10億ユーロ規模の投資を行っていきます。実際に14年には、研究開発に前年比13.6%増の9億7400万ユーロを投じました。
――中国をはじめとしたアジアなどの新興国では旺盛な需要に対応するため、食料を大増産しています。バイエルクロップサイエンスにとっては、大きなビジネスチャンスですね。
確かに、われわれもアジア市場を重要視しています。とりわけ、食料増産が急務となっているインド市場で事業が拡大しています。また、干ばつ対策が課題となっている東南アジアでも、当社製品の需要は拡大するでしょう。
しかし、中国は事情が異なります。中国では、2000社を超える現地資本の農薬メーカーが市場を支配していて、欧米企業は市場攻略に難渋しています。それでも、こうした事業環境も徐々に改善しつつあります。
アジアと同様に、日本は極めて重要な市場と位置づけています。われわれは、長期にわたって農業の生産資材メーカーとして、確固たる地位を築いてきました。
現在、日本の農業は、農家の高齢化と後継者不足という二大問題に直面しています。当社がこうした社会問題に直接関与することは難しいことですが、農業関係者や日本政府との対話を続けながら、日本の若い世代にとって、農業が魅力的で競争力の高い産業であり続けられるようサポートしていきます。