まず心配だったのが不動産コストだ。都内にオフィスを構えるとしたらいったいどのくらいかかるのか。公的なインキュベーションスペースの利用も視野に入れ、できるだけ抑えようと考えた。その結果、月額10万円と想定した。小さなワンルームマンションを賃貸するような感じだ。共益費や光熱費なども入れて、最大15万円と考えた。つまり、年間180万円。結構な額だ。

 仮に、1000万円の年収がほしければ、これだけ考えても、1200万円近くの売上が必要になる。逆にこれだけの経費を掛けて、もし400万しか売上がなかったら、その時点で自分の収入は差し引き220万円になってしまう。

 この単純な計算を、まずはしっかりと認識しておいてほしい。

割り勘主義でムダ遣い排除!
“商人的金銭感覚”が重要

 私の場合は当初、この不動産費まではとても稼げないと思い、自宅で起業することにした。

 次に心配だったのが、情報取得にかかるコストだった。野村にいた時は、新聞社系のデータベースなどをふんだんに使っていたが、こうした情報費も決して安くないと戦々恐々としていた。ところが、幸いなことにこれについては杞憂に終わった。図書館に足を運べばかなりの情報が無料ないし安価に得られることがわかったからだ。今ならばインターネット検索も活用できるからさらに安心だろう。

 次に心配だったのが旅費交通費や接待費だった。これに対しては、実は、野村総研を辞める数年前からやっていたことがあった。交通費と接待費を会社に請求しないことに決めたのだ。独立してからの痛みを知るためだった。

 最初はきつかったのだが、やっていくうちに、それほど気にならなくなった。うまい経費の使い方の知恵もついてきた。タクシーも楽をするために鷹揚に乗るのではなく、うまく活用する術を覚えた。接待はやめて、割り勘主義を貫いた。接待をする場合も、自分でよくよく吟味して、安くても喜ばれるような場所を選ぶようになった。

 そうしたことすべてが、起業した際には有益なノウハウとなってくるものだ。

人はそう簡単に雇うな!?
新米起業家が陥りやすい“罠”

 そんな準備もして、私は独立をした。私の場合は最初から株式会社にしたが、先述したように、最初は自宅で一人きりの会社だった。

 起業には、個人事業主になる道と、会社(多くの場合は株式会社)を設立する方法とがある。多くの人は両者の明確な違いをわかっていない。一般的には身の丈の起業と、上場を目指す起業の間に線を引いて区別する傾向がある。しかしそれは間違いだ。あくまでも、個人事業なのか会社設立なのかの間に線を引くべきだ。

 その違いは、自分以外の人間を雇うかどうか、だ。そして、この「人を雇う」という行為が、新米起業家が陥る罠となることが多いのだ。