また、品目別の軽減税率適用では、買い物の際の請求書に個別品目ごとの税率を記載するインボイス方式の導入が必要になるとの意見が多い。それ以外に簡易課税の方法もありそうだが、確かに、インボイス方式がフェアであり、欧州などの軽減税率適用国でもそうしている。

 しかし、インボイス方式への移行では、現在いわゆる「益税」のメリットを得ている中小業者の反対が予想される。

 来年の参院選を意識し、軽減税率の実現を急ぐ場合には、官邸主導で強引にインボイス方式への移行を進めるのが、唯一の解かもしれない。これに伴って、中小企業対策として、何らかの複雑な優遇税制を設ける案が出てくる可能性もある。税制の複雑化は、公平と並んで簡素を旨とすべき税の一般的考え方としては好ましくないが、財務省を頂点とする「税務業界」にとっては利益となることなので、より実現性があると考えるべきかもしれない。

 一方、マイナンバーカード方式では、逆進性対策としての合理性はあるとしても、実現にコストと時間がかかりそうなこと、そもそも買い物をする際にメリット感が乏しいことなどが、政治的に嫌われそうだ。

軽減税率は「いいこと」なのか
給付金支給の方が明らかにベター

 新聞を読むと、「与党は『税率10%時』の軽減税率導入で合意し、衆院選の公約にも掲げた」とある(『読売新聞』9月13日朝刊)。「だから、やれ」、「やって当然だ」と言いたいのかもしれないが、そもそも品目別の軽減税率を適用することは「いいこと」なのか。

 前述のように、生鮮食料品などの生活必需品の消費税率を軽減する理由は、低所得生活者に対する逆進性の緩和が目的だ。

 しかし、先の新聞も「カットレタス」は生鮮食料品だが、「ミックスサラダ」は加工食品だ、といった線引きの難しさが、軽減税率制度検討委員会(委員長・野田毅自民党税制調査会長)でも議論されたと報じる。

 品目別の軽減税率が実現した場合、適用品目の指定は、将来、財務省や政治家の権限の源になり得る。

 例えば、消費税率の引き上げに対して、新聞や雑誌が賛成ないし批判記事を書く場合でも比較的寛容なのは、新聞と書籍に対する軽減税率適用が関係しているのではないかとの推測が成り立ち得る。