消費税の軽減税率の問題については、与党協議会でのヒアリングがほぼ終わり、年末の最終決着に向けた駆け引きが始まる。しかし、消費税率引き上げに伴う低所得者対策の議論は、軽減税率の代替案である「給付付き税額控除」について何ら議論していないという点で、大変不十分な議論だ。そこで筆者は、給付付き税額控除の試案を作ってみたが、軽減税率とは全く異なる政策効果があることが分かる。
給付付き税額控除は民主党政権が主張したものだが、政治の恩讐を超えて、国民の立場から議論する必要がある。
軽減税率か給付付き税額控除か
与党税制協議会において、軽減税率を飲食料品に導入した場合の減収額8ケースの案などが示され業界ヒアリングが行われている。ヒアリングではおおむね反対の意見が多いようだが、年末に向けて政党間でのさまざまな駆け引きが行われるものと考えられる。
消費税率を4月から8%に引き上げ、さらに来年10月から10%に引き上げることを内容とした消費税増税法第7条は、以下のように規定している。
「低所得者に配慮する観点から、番号制度の本格的な稼動及び定着を前提に……給付付き税額控除等の施策の導入について、所得の把握、資産の把握の問題、執行面での対応の可能性等を含め様々な角度から総合的に検討する。……複数税率の導入について、財源の問題、対象範囲の限定、中小事業者の事務負担等を含め様々な角度から総合的に検討する。……施策の実現までの間の暫定的及び臨時的な措置として……簡素な給付措置を実施する。」
つまり、低所得者対策として、「給付付き税額控除」か「複数税率」の導入を検討すること、その実現までの暫定的・臨時的な措置として「簡素な給付措置」を実施することとしているのである。
ところが与党税制協議会での議論は、複数税率が意味する軽減税率についてのみ行われており、給付付き税額控除に関する議論は全く行われていない。それどころか、政府部内でも、具体的な検討すら始まっていない状況だ。ちなみに「給付付き税額控除」とは、一定の目的の下に、所得に応じて税額控除や給付をする制度のことである。
この理由はよく分からないが、給付付き税額控除は民主党政権が主張したもので、政権交代が行われたのだから議論するまでもない、という感覚だろう。そうであれば、消費税法の規定はどのような意味を持つのだろうか。
「消費税還付制度」という名称にすれば抵抗もなくなるのではないか。