『原子炉時限爆弾』で、福島第一原発事故を半年前に予言した、ノンフィクション作家の広瀬隆氏。
壮大な史実とデータで暴かれる戦後70年の不都合な真実を描いた『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』が第5刷となった。
本連載シリーズ記事も累計179万ページビューを突破し、大きな話題となっている。
そんななか、8月28日、東京駅前の八重洲ブックセンター本店で、本書の出版記念講演会が開催された。
当日は金曜夜にもかかわらず、地方からも多くの方々が押しかけ、満員御礼になった。
普段の広瀬氏の講演会は「最低3時間以上」だが、この日は「60分間」限定。
それだけに会場からは、「密度が濃すぎた」「とても1時間では語り尽くせない内容だった」「本当にきてよかった」と真顔で話し出す人が続出!
それを見た担当編集者は、この熱気を全国津々浦々の方へ届けたいと、広瀬氏にリクエスト。ついに、濃密な講演内容を3回に分けてリリースできることになった。
反安倍政権の動きと、緊迫感高まる川内原発再稼働問題のなか、注目の最終回をお送りする!

2013年2月22日の「毎日新聞」で
何が報じられたか?

広瀬 隆
(Takashi Hirose)
1943年生まれ。早稲田大学理工学部卒。公刊された数々の資料、図書館データをもとに、世界中の地下人脈を紡ぎ、系図的で衝撃な事実を提供し続ける。メーカーの技術者、医学書の翻訳者を経てノンフィクション作家に。『東京に原発を!』『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』『クラウゼヴィッツの暗号文』『億万長者はハリウッドを殺す』『危険な話』『赤い楯――ロスチャイルドの謎』『私物国家』『アメリカの経済支配者たち』『アメリカの巨大軍需産業』『世界石油戦争』『世界金融戦争』『アメリカの保守本流』『資本主義崩壊の首謀者たち』『原子炉時限爆弾』『福島原発メルトダウン』などベストセラー多数。

 このあと八重洲ブックセンター本店で話したことは、その先に起こること、つまり「4年前に起こった大量の被曝によって、福島県だけでなく、東京を含む東日本全域で、これから人間の体内で何が起こるか」という話であった。

 福島第一原発の北西5.6キロメートルの双葉町上羽鳥《かみはとり》では、水素爆発が起こる前の、2011年3月12日午後3時00分に、1時間あたり1590μSvを記録していたのである(μSvは、100万分の1シーベルト)。

 これを年間の被バク量に換算すると、14 Sv/年であるから、致死量の2倍という、トテツモナイ被曝量であった!! この事実が公表されたのは、事故の翌年、2012年9月21日になってからであった。

 そして翌年、2013年2月22日の「毎日新聞」が、重大なことを報道した。

 福島第一原発の1号機で、2011年3月12日の午後3時36分に「最初の水素爆発」が起こった。
 だがそれより5時間以上前の、朝10時に、原発に近い山田地区では、やはりトテツモナイ空間線量を記録していた、という事実を。

 この時刻は、1号機の格納容器が破壊されそうになったため、致し方なく、ガス抜きをする「ベント」が実施されるであった。ベントとは、排気という意味だが、この場合は、原発内部から高濃度の放射性ガスを、福島県の空に放出する、という作業のことである。

 つまり、住民の大量被曝に目をつぶって、「原発の大破壊を食い止める」、という非常手段がベントである。

 絶対にしてはならないこのベントによって、福島県民は大量に被曝したのだ。