新車が売れなくなるのに
本気でカーシェアリング

 もうひとつ、トヨタが敵わないメルセデスの強みがある。それが、カーシェアリング事業だ。

ダイムラーが世界8ケ国で展開している、カーシェアリングの「CAR2GO」。旧型スマートに加えて最近、新型スマートも導入 Photo by Kenji Momota

 スマートを使った「CAR2GO」は現在、8ヵ国の30都市で1万3500台を常備し、登録会員数は100万人を超えている。特徴は、どこでも借りられて、どこでも返却できること。つまり、路上駐車が法的に許可されている国や地域でサービスを行っている。先進国の多くで若者のクルマ離れが進む中、最近は「CAR2GOを利用したいから自動車の運転免許をとった」という若年層が出現しているほど、新しい交通システムとして街に根付いている。

メルセデスのマーケットイン戦略、メルセデス・ミー Photo by Kenji Momota

 CAR2GOは、メルセデスが掲げる商品戦略「Mercedes me」に含まれる事業モデルだ。「Mercedes me」とは、消費者である「me」を基点としてメルセデスとの接点を構築するもの。つまり、メルセデスの真骨頂であるプロダクトアウトの対極にある、マーケットイン型の考え方だ。

 Mercedes meは、「connect me」「assist me」「finance me」「inspire me」そして「move me」という5つの領域で構成されており、CAR2GOはmove meに属する。

メルセデスのカーシェアリング事業部のひとつ、moovel 事業部のRalf Echtler氏 Photo by Kenji Momota

 このmove meには、CAR2GOやBクラスを使ったタクシーサービス「mytaxi」等、メルセデス(ダイムラー)の自社製品を利用するビジネスモデル以外に、メルセデスが投資した交通システムの乗り換えをスムーズに行うスマートフォンアプリサービスの「moovel」や「RIDESCOUT」等が含まれている。つまりmove meとは、従来の自動車メーカーが行っている“新車売り切り型”ではないビジネスモデルの集合体である。

 他方、トヨタの場合、超小型モビリティの「i-ROAD」等を使った試みを行ってはいるが、どれも国や地方自治体からの補助事業としての実証試験に止まっており、事実上、補助金がなければ成り立たない。トヨタにはMercedes meのような新しい時代のクルマと消費者との関係を考えるための“現実的な新事業戦略”が存在しない。

 以上のように、自動車産業界における“大きな括り”を自力で構築する実行力こそが、メルセデスの強みなのである。