カリスマ経営者、登場!
数日後、はるかは緊張した面持ちで『味樹園 吉祥寺店』の掘りごたつに座っていた。
「はるかちゃん、ホワイトボードこれでいいかな?」
「はい、大丈夫です。ありがとうございます」
はるかはコンサルティング道具としてホワイトボードの用意だけを宇佐美に頼んでおいた。
「やあみんな、おはよう。今日はよろしくな」
元気のいい声で、はるかより少し遅れて昌一郎が現れた。
「では、今からコンサルティング会議を始めます。こちらは今回お手伝いいただく、コンサルタントの岩田はるかさん。まだ大学生です。今回はK’sの中川社長も手伝いに来てくれました。はるかさんは中川社長イチオシのコンサルタントさんだ。みんな、はるかさんの言うことをしっかり聞いて取り組んで行こう。では、中川社長、はるかさん、今日はよろしくお願いします」
「皆さん、おはようございます。中川です。宇佐美君はうちの社員として頑張ってくれたので、今日はその恩返し。はるか共々よろしく。じゃ、はるか、みんなに挨拶をしなさい」
『味樹園』のスタッフは背筋をしっかり伸ばして昌一郎の話に聞き入った。さすがはカリスマ経営者、その風格とオーラですぐにその場の雰囲気を支配してしまった。
「はい、今ご紹介いただきました岩田はるかです。まだ新人で恐縮ですが、一生懸命頑張りますのでよろしくお願いいたします」
昌一郎のいつもと違う雰囲気に、はるかも飲まれそうになっていた。
「ありがとうございます。では、みんなも一人ずつ自己紹介しようか。順番に進めてよ」
こうして宇佐美が社員たちに紹介を促し、会議がスタートした。
「今日の仕切りは私ということでいいかな?」
「はい、よろしくお願いします。みんな、中川社長が直々に会議を進めてくれる機会なんてまずないから、しっかりと勉強しような」
「はい、よろしくお願いします」
少し緊張感のある雰囲気の中、昌一郎がおもむろに立ち上がった。もちろん全て昌一郎が作り出した雰囲気である。そんな中、昌一郎は従業員たちに語り始めた。
「では初めに、私からみんなに一つ質問をしよう。君たちが50歳になった時のことを考えて欲しい。ちなみに君は、えっと……」
「あ、服部です」
「うん、服部君か。君は今、いくつだ?」
「27歳です」
「そうか、まだまだ若いな。では私の話はピンとこないかもしれないが、想像でいいので考えてほしい。みんなもな。君たちが50歳になった時、大学生・高校生・中学生の子供がいるとする。その時、今の待遇で生活できるのかな? 生活できると思う者、手を挙げてみなさい」
昌一郎がそう言うと全員が下を向いてしまった。