では、こうした状況を識者はどう分析しているのか。保守系の動向に詳しく、近著に『左翼も右翼もウソばかり』(新潮新書)『ネット右翼の終わり──ヘイトスピーチはなぜ無くならないのか』(晶文社)などがある評論家の古谷経衡氏は、昨今の「日本大好き」な日本人の増加について、こう指摘する。

「定義にもよりますが、一般的に想定されているような憲法9条改正や自虐史観の見直しなどの動きを右傾化・保守化と表現するならば、それは確実に進んでいると言えます。ただし、その流れの主体は40代や50代以上の中高年で、嫌韓・嫌中本の購入層のメインも、この年代です」(古谷氏)

若者の保守化は進んでいない
保守化しているのはむしろ中高年

 保守化の動きは主に中高年によるものと指摘する古谷氏。メディアで度々指摘されている「若者の保守化」については、否定的だ。

「若者が右傾化しているという事実を示す信頼できるデータは存在しません。私が保守系の集会やデモなどを取材する限りは、若者は少ないように感じています。また、靖国神社の『みたままつり』に若者がたくさん訪れていることを保守化・右傾化の証左とする言説もあります。しかし、報道されているように、『みたままつり』は“ナンパ祭り”とも一部から呼ばれていて、若者のマナーの悪さが問題になり、今年から露店の出店が禁止されました。ですから、本当に戦没者慰霊や歴史問題に関心があって靖国に来ている若者がどれだけいるのか、実際のところはわかりません」

 つまり、社会全体は保守化しているものの、一部で指摘されているように、突出して若者だけにその傾向があるというわけではないのだという。

「中国がここまでの大国になるとは思わなかった、と感じている日本人は多いはずです。そんななか、尖閣諸島の領土問題など、安全保障環境が庶民の皮膚感覚として明らかに緊張したものになっています。さらに、日本経済も落ち込み、国民の自信もなくなってきた。『日本は強い』『日本は素晴らしい』といった言葉が目立つのも、自信のなさの裏返しだと思います。本当に強い国は、自分からそんなことは言いませんから」(古谷氏)

 古谷氏によると、保守系の人は「今までが、日本の悪口が多すぎた。その反動が、日本礼賛の風潮に現れている。自国を持ち上げるのはどの国も同じで、国際標準に戻っただけだ」と説明することが多いという。それが、昨今の“日本礼賛ブーム”につながっているのだと。

 しかし、「先進国のマスコミはどこも、自国に手厳しい批判を浴びせるのが当然です。彼らの言う『世界標準』は、彼らが一番嫌っている中国や韓国を見て言っているにすぎないと評価することもできます」(古谷氏)とも。