民間主導で未来を創発
新しい産官学のあり方を目指す

 経済やビジネスの専門家の中には、1つの産業を「国策」的に盛り上げようと、国が前のめりになる時代が終わりつつあるというご指摘を聞きます。確かに、政治家や官僚がプランをつくって、イノベーションを起こせるわけではありません。しかし、使い古された言葉で言えば「産官学」が連携して、互いが持ち味と役割を発揮し、特に民間で新時代を切り開く技術、ビジネスが創発していけるよう、相乗効果を生む環境を整えていく意義は十分にあります。

 その観点から、この協議会では「官」(文部科学省)と「学」(大学の研究者)のみならず、「産」「民」「自治体」などに、これから精力的に声をかけていこうと思っています。日本や世界中の人々がロボットを身近なものとして普及できるようにするには、「産」、つまり民間企業や「民」、つまりNPOやNGO、地域コミュニティの力が欠かせません。

 初日は、民間企業とマスコミの関係者を合わせて60を超える方々が傍聴され、自動車メーカー、通信会社、総合電気メーカーなどの大手から、自動運転開発で話題のネットベンチャーまで、日本国内の有望なプレイヤーにお集まりいただきました。10月中旬を目処に参加プロジェクトを募集しますが、「世界のイノベーション大国に追いつき、追い越せ」の精神で、「日本から新しい時代を創発する」と意気込む民の皆様に、ぜひ手を挙げていただきたいと思います。12月にも開催される第2回の協議会では、志のある挑戦者たちの顔ぶれをご報告できそうです。

 民間主導で未来を創発しなければならない理由として、もう1つポイントがあります。

 といっても、これは民間というよりも日本国政府の懐事情ですが、今回のプロジェクトに対して、政府が多額の予算を付けるのは難しい情勢です。20年ほど前までであれば、民間が投資に消極的になるような“海のものとも山のものとも分からない”分野の研究開発に、国が投資的に支援する余裕がありました。

 しかし、現下の財政状況では、それが年々厳しくなっています。ことに最近は、実るかどうかわからない未来への投資に対して国が乗り出そうとすると、投資も消費も一緒くたにして、冷静かつ戦略的な政策論議が行われず、感情的にムダ遣いだと決めつける世論の傾向が強まっていますので、今後も政府が未来への投資をしていくのはますます難しくなっていくでしょう。社会投資資金を税金に頼れなくなった現実を踏まえ、いかにそうした資金を集めていくかも、今回の社会実験の目的の1つだと思います。