新学習指導要領の骨組み固まる
「人工知能」に負けない思考力を育てよ
こんにちは、鈴木寛です。
さる8月20日、新しい学習指導要領づくりに向けた、中央教育審議会(中教審)の教育課程企画特別部会の論点整理が終わりました。報道でご案内の通り、高校では、国内外の近現代史を重点的に学び、暗記偏重の歴史から歴史的思考力育成を重視した「歴史総合」、現在の公民よりも社会参画を意識した「公共」、数学と理科を横断的に学ぶ「数理探求」などの新しい科目を設けます。そして、児童生徒が主体的に学び問題を解決する「アクティブ・ラーニング」を導入していきます。
さらに、8月27日には、高大接続システム改革会議の中間まとめが取りまとめられ、多面的・総合的に評価・判定する入学者選抜への転換などを目指したアドミッション・ポリシー(AP、入学者選抜方針)の改革、大学教育の内容・体制と修了認定を見直すカリキュラム・ポリシー(CP)・ディプロマ・ポリシー(DP)改革の一体改革の方向性が打ち出されました。
なぜ、いま改革が必要なのでしょうか。
人工知能が発達して、多くの人間の仕事が人工知能にとって代わられると言われています。先日も、IBMのワトソン君という人工知能が某銀行の銀行員の採用試験に合格したとか、国立情報学研究所の東ロボ君という人工知能が、東大は難しいが、全国の8割の大学ならば、合格できる水準に達したといったニュースがありました。
今年1月に掲載した記事「イノベーションなき20年の元凶はマークシート 入試改革から“日本を取り戻す”」でも書きましたが、知識偏重型の試験は工業型社会では有効なシステムでした。暗記力と反復力を身につけ、マニュアル通りに正確に仕事ができる人材が社会的要請だったので、理にかなっていました。
しかし、2040年にはシンギュラリティ(人工知能が人間の知的能力を上回る段階)の時代が来ると予測されています。今年の15歳が40歳になったとき、人間ならではの仕事をして生き残るために、人工知能が得意ではない感性や個性を駆使して「個別解」を見い出し、それをチームで実現していけるような力を育んでいかねばなりません。