陰謀論に楽観論と様々
中国知識人たちの第一印象

 群における中国知識人のTPPに対する“第一印象”をゆるく色分けすると、「米国が中国を封じ込めるための新たな陰謀」という、警戒心に満ちた陰謀説と、「気にする必要はない。中国は自らの道を行き、自分たちの秩序をつくればいい」という、突き放すような楽観論に割れていた。

 10月7日、中国の政府系シンクタンクで国際関係を研究する学者が、群のなかで比較的長めのコメントを披露した。

「この2日間のTPPに関する文章を俯瞰してみると、その多くが感情的であり、オバマの“中国のような国家にルールを決められてはならない”の一言に憤慨を示している傾向が強いように思われる。オバマ声明は、米国が中国の発展を米国のグローバル経済主導権に対する脅威だと認識していることの裏返しだと言える。TPPがピンポイントに対中政策の一環であることは明らかだ」

「一方で、TPPの内容において、中国が目指す改革の方向性と合致する部分が多いことも確かであり、参考になる。今回の交渉では、米国が制度建設とルールセッティングの分野で自らのソフトパワーを発揮した。これは中国に欠けている能力であり、特に“一帯一路”(One Belt One Road)建設などの過程で米国に学ぶ必要がある」

 また、私が所属する2つのシンクタンク群のなかで引用された見解として、中国知識人の戦略観を象徴していると感じたのは、馮〓・上海復旦大学教授(日本研究専門、〓の文字は王へんに韋)による「TPPは米国がアジア回帰する過程で、経済貿易の分野で中国を封じ込めるための重要な仕掛けであり、TPPが中国に挑戦することは免れない。だとすれば、我々に残された選択は参戦しかない」というコメントと、龐中英・中国人民大学教授(米国研究専門)による「中国が非創始国としてTPPへの加入を申請した場合、それは重大な地政学のシグナルとなる。すなわち、中国が引き続き米国が主導するグローバルリーダーシップと国際秩序を受け入れることを表明することになる。そう考えると、仮にTPPが間接的に中国の改革と開放を促すことができるのだとしても、そこへの加入は我々の選択肢ではない」というコメントであった。

 “TPP大筋合意”でスタートした先週、私はワシントンDCで、対米外交の政策評価を担当する中国政府の幹部と話をする機会があった。当然、TPPが話題の中心であったが、中国政府としてどう見ているかをうかがうと、開口一番、次のような答えが返ってきた。

「合意の直後に商務部報道官が出した声明がすべてだ」

 10月6日(北京時間)、商務部報道官は次のような声明を端的に発表している。

「中国はWTOのルールに符合し、アジア太平洋地域における経済一体化を促すことに寄与する制度建設に対して、一律に開放的な態度を保持している」