賃金低迷という悩ましい問題
生産性の伸び率低下で長期停滞か

 今後の不安として、米国の賃金の低迷が続いていることがある。ここは米国経済を見る際に、悩ましい問題とされているところである。

 失業率は5.1%(9月)まで下がっている。それでも賃金上昇は鈍い。不本意にパートタイムで働いている人がいる。就労条件が悪そうなので就職しない人がいる。したがって、労働市場にはまだ供給余力がある。経済が上向き続ければ、労働市場が引き締まり、賃金が上がりだすとされる。

 このメカニズムで賃金が上がりだせば、雇用者所得が増え、消費が増え、景気拡大は次のステージに進め、長期停滞の心配など吹き飛ばせるというのが、願望のシナリオであろう。

 その願望のシナリオの示現を見込みきれない問題がある。米国経済の労働生産性の伸び率が鈍っていることである。生産性の伸び率低下について、多くが納得する説明は提示されていないが、生産性が伸びないと賃上げの原資が得られないことには着目すべきである。

“利上げなき引き締め”が変調の要因
迷走しそうな金融政策

 米国の経済指標の軟化が見える。中国の経済成長の減速の影響がないわけではないだろうが、それで米国経済の変調は説明しきれない。

 いわゆるQEの停止で、資産価格の上昇が止まったことと、実質金利の上昇、それに伴いドル高も起きたことが、米国の景気拡大に変調をもたらしているのではないかというのが、ここで見えてきている姿である。利上げなき引き締めである。Fedが利上げを続けた場合、またイエレンFRB議長の見込むインフレ率の上昇がない場合、米国経済には実質金利高のブレーキがかかることになりかねない。

 米国経済に意外といえる軟化の動きが出てきたことについて、その要因の解明が進められるであろう。10月28日のFOMC声明は、次回12月15・16日のFOMCで利上げを決定する方針を打ち出した。イエレン議長は、9月24日の講演で、“年内に利上げを開始し、その後、連続利上げに入る”という金融政策の運営方針を言っている。しかし、米景気拡大の軟化の要因が見えてくれば、その金融政策運営の方針は、修正される可能性をみておきたい。

(文中の見解は個人のものである)