FRB(アメリカ連邦準備制度理事会)利上げ延期決定に対して、ニューヨークの証券取引所では株価が値下がりした。また、円高が進み、日経平均株価も値下がりした。
これは一見すると不思議な現象である。利上げ延期になれば、これまでと同じように投機を続けることが可能であるはずだからだ。
なぜこうした動きが生じたのだろうか?そして、今後はどうなるのか?
FRBが利上げできないほど
新興国経済の問題が大きい
仮に株価や為替レートが、利上げが9月に行なわれることを織り込んでいたとすれば、それが実現しないと分かったので、逆方向の動きが生じるはずだ。円高については、この解釈どおりのことが起きた。しかし、この解釈によれば、株価は上昇するはずである。
しかも、利上げは、延期になっただけのことであり、中止になったわけではない。利上げは、今後確実に行なわれる。不確実なのは、時期と幅だけだ。
したがって、現実の動きを説明するものは、「FRBが利上げできないほど経済状況が混沌としている」ということしかない。ここで重要なのは、つぎの2つだ。
第1に、この場合に問題とされている「経済情勢」とは、アメリカ経済のそれでなく、新興国経済のそれである。
つまり、金利引き上げによってアメリカ経済の成長率が下がるから引き上げられないのではなく、新興国の経済が悪影響を受けるために、アメリカが金融正常化できないのである。