経済や青少年交流をはじめ、多角的に関係や交流を促進していくことが議論されたが、私が個人的に最も注目したのは中台が“分断状態”にあり、かつ双方が異なる政治体制を要するが故に生じている、生じ得る問題を両首脳がどのように描写し、落とし所を模索していくかであった。

中台間の微妙な駆け引きを
象徴する「3つの文脈」

 本稿では、中台間の微妙な駆け引きを象徴する3つの文脈を取り上げる。

 1つ目は経済関係である。習近平は“中台経済”について次のように語っている。

「我々は台湾の同胞と共に中国大陸の発展機会を享受したいと思っている。両岸はマクロ政策に関する意思疎通を強化し、各自のアドバンテージを活かし、経済協力の空間を開拓し、共通利益のパイを大きくしていける。そこから両岸の同胞間の受益面と獲得感を増やしていける。貨物貿易、商工会相互設立などに関しては話し合いを通じて、1日も早く合意できるだろう。我々は台湾の同胞が“一帯一路”建設に積極的に参加すること、適切な方式でアジアインフラ投資銀行(AIIB)に加入することを歓迎する」

 台湾では近年、中国との関係が深まるに連れて自らの経済が中国に呑み込まれるだけでなく、雇用の流出や物価の上昇、さらには法やルールといった分野にまで悪影響が出るのではないかという懸念が高まっている。習近平の発言からは、経済の交流だけでなく、政策決定過程を通じて、また自らが主導するAIIBへの加入を歓迎することによって、中台関係の“一体化”を深めていこうという共産党指導部の戦略的意図がうかがえる。

 2つ目が、安全保障と台湾の“国際空間”に関してである。

 馬英九は台湾の人々が自らの安全と尊厳の問題に大いなる関心を抱いていることに、習近平・中国サイドからの理解を求めたいと提起した。

「台湾の多くの民衆は大陸の台湾に対する軍事措置に関心を持っている。たとえば朱日和基地とミサイルだ。習さんは“関連措置は台湾に向けたものではない”と言っていた」(会談後の記者会見にて)

 首脳会談にて、馬英九が「我々の民衆がNGOに参加しようとしても往々にして挫折してしまう。我々政府が地域経済一体化や国際活動に参加しようとしても邪魔が入ってしまう。これらの分野に関して敵意と対立を減らしていかなければならないと希望している」と現状に対する不満を口にしたのに対し、習近平は次のように答えている。