中国共産党が参考にする
「シンガポールモデル」
7月末、私はシンガポール共和国にいた。
赤道直下に位置するため、年間を通じて高温高湿。少し走っただけで全身がびしょびしょになってしまう。この季節なのに、日の出は7時ごろと遅めだ。
高層ビルが立ち並び、交通などのインフラは便利で、緑が随所で見られる。「都市設計」の四文字を赤裸々に感じさせる街並みだ。法律やルールで秩序や安定が維持されている。先進国の匂いがする。人口は約550万人、一人あたりのGDPは5万ドルを超える。税制面における優位性から、最近は欧米などの富裕層がこの土地に移住してきている。若い日本人起業家もスタートアップを立ち上げるべくシンガポールに流れてきている。そして言うまでもなく、投資、就業、留学、観光など多種多様な動機で訪れる中国人をそこら中で見かける。シンガポールの中心部に位置するチャイナタウンは聞き慣れた“北京語”で溢れていた。
新しい建築物や地下鉄のラインの建設が進んでおり、まだまだ発展していくイメージだ。一方で、数年前まで見られた道端の小さな食事処やお土産屋さんの多くが姿を消していた。地価が上がりすぎてしまい、特色ある小さい店はやっていけなくなっているためだ。ある地元の市民はシンガポールの未来に対して「物価はどんどん上がり、私たちの生活は苦しくなっている。場所もなくなってきた。これから何を、何処に拡大しようというのか」という疑問を呈していた。
英語、中国語、マレー語、タミル語を公用語に設定している。多様性を保ちながら発展してきた都市国家も、来年度(2014年)で50歳になる。“建国の父”であるリー・クアンユー初代首相(1923年9月16日~)はどんな思いでその時を迎えるのだろうか。
「開発独裁」とも称される権威主義的体制の下、政治的には事実上の一党独裁で、経済的な繁栄を続けてきた。
社会主義市場経済を掲げる中国では「シンガポールモデル」と呼ばれ、中国共産党は指導部から中堅官僚まで、その発展モデルを大いに参考している。