客船や探査船が人手を要しドック(船の建造、修理を行う施設)を占拠したため、LNG船の建造スケジュールにも狂いが生じそうな雲行きなのだ。受注済みのLNG船12隻の建造はこれからピークを迎える。同社関係者は「工程の組み替えにより、負の連鎖を最小限に抑えて納期を守りたい」と話す。だが、客船の納期延期を繰り返してきただけに、その実効性には疑問が残る。何しろ、全ての元凶である客船(2隻目)の進水すらできていないのだ。

 三菱重工にはさらなる試練が待ち受けている。造船事業の柱となるLNG船は、大得意先である日本の電力・ガス会社からの受注がすでに9割方終了。これらの建造で食いつなげるのはせいぜい3~5年だ。しかも、低コストが売りの韓国企業との受注合戦に勝つのは至難の業で、5年後の受注計画については、「走りながら考える」(横田社長)状況なのだ。

頼みの綱は火力発電船

 そもそも、韓国企業が追随できぬ高度な技術を武器に、造船業界で存続しようと手掛けたのが大型客船だった。だが、結果は周知の通り。今夏までにカーニバルグループが4隻の客船を欧州造船会社に発注したことで、三菱重工が連続建造する道は閉ざされた。

 造船存続の切り札は、洋上でLNGを燃やして発電する世界初の「火力発電船」だ。離島などに売り込み、「手応えを得ている」(三菱重工関係者)という。だが、森貴宏・メリルリンチ日本証券アナリストは「LNGの安定供給方法や費用対効果が見込めるかなど課題も多い」とみる。三菱重工が難局を打開できるか、正念場を迎えている。

(「週刊ダイヤモンド」編集部 千本木啓文)