日本を代表する重厚長大産業──、商社、造船、プラント業界の大手企業が経営危機にひんしている。原油価格の暴落に端を発する資源リスクと、ブラジルの政治リスクに晒されているからだ。忍び寄る巨額損失ショックに迫った。(「週刊ダイヤモンド」編集部 浅島亮子、須賀彩子、千本木啓文)
商社に「冬の時代」が再来するのか──。3月25日、住友商事は2015年3月期の連結最終損益を下方修正し、従来の黒字見通しから一転、850億円の最終赤字となる見込みだと発表した。
昨年9月に約2400億円の減損損失の計上を発表したばかりだったが、足元の原油・鉄鉱石の資源価格の落ち込みが響き、通期で総額3250億円に上る巨額減損の計上を迫られた。
最終赤字に陥るのは、1999年3月期以来のことだ。当時、バブル崩壊後の不良債権処理と、トレードの仲介手数料で稼ぐ“口銭商売”の先細りというダブルパンチに見舞われ、商社は冬の時代を迎えていた。そして今、16年ぶりの経営危機に直面している。
スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)は、「リスクアセットと株主資本のバランスが悪化した」として、住友商事の長期会社格付けをシングルAからシングルAマイナスに引き下げた。
減損の大半を占めるのが、米テキサス州パーミアン・ベースンでのシェールオイル開発プロジェクトだ。12年に投資を決断したものだが、オイルの抽出が難しいことが判明した。当時の原油先物価格(WTI)は1バレル90ドルを超えていたが、その後の原油価格の暴落により傷口は大きく広がった。
この背景には、「三菱商事、三井物産に出遅れた資源投資への焦りから、高値つかみをした」(商社幹部)こともありそうだ。パーミアンの案件は総投資額1900億円に対して、減損計上額は1700億円。加えて、同じプロジェクトの別鉱区でも追加減損300億円が発生し、総額2000億円もの減損を計上することになった。
さらに、ブラジルの鉄鉱石事業でも、9月時点では500億円を見込んでいた減損額が650億円に膨らむ見通しとなった。
これまで住友商事は、総資産における資源権益の割合を2割にする目標を掲げていたが、「当面、資源分野に関しては、既存案件の収益向上に注力する。資源への投資は10%に抑えたい」(中村邦晴社長)と、事実上、新規案件への投資を凍結する方針を示した。