船用エンジンのメーカーに淘汰の波が迫ろうとしている。2016年から強化される排出規制に対応できなければ、市場からの退出を迫られるからだ。

日立造船のNOx削減装置と重油を燃料にする船のエンジンの模型。エンジンは高さ約13m。NOx削減装置のコンパクト化を進める
写真提供:日立造船

 規制強化は、国連の機関である国際海事機関(IMO)で決まった。16年1月以降に建造され、北米などを通る船は、酸性雨の原因となる窒素酸化物(NOx)排出量を10年までの規制値から8割減らす必要がある。

 国土交通省によれば、日本の船用エンジン生産額は2400億円(12年)。メーカー数は約10社を数える。だが、各社共に、価格低迷にあえいでおり、最大手の三井造船ですらエンジン部門を黒字化できるかどうかという状況だ。

 実は、船用エンジン業界には、構造的な課題がある。大型の船用エンジンのほとんどが、ドイツのメーカー、マンなどの技術を使ったライセンス生産であるため、性能で差別化しにくいのだ。マンとの契約上、輸出も原則、認められない。

 規制強化に対応するNOx削減装置は、エンジンに外付けするタイプとエンジン一体型とがシェアを争う。だが、国交省が「全社が規制に対応できるとは確認していない。技術開発が遅れれば販売が難しくなる」(船舶産業課)とみるなど、複数社の脱落も予想される。

 外付けタイプで勝負するのは業界2位の日立造船だ。「導入費が数千万円と比較的安価」(同社)なのが特徴。外付けの装置と1機数億円のエンジンをセットで売り込み、エンジン部門の黒字化を図る。日立造船は、21年の世界のNOx削減装置の市場を1000億円とみて、このうち200億円のシェア獲得を目指す。