フランスの重電メーカー、アルストムの争奪戦には敗れたものの、数年越しで事業再編を加速させている三菱重工業。1884年(明治17年)に創立された同社は、日本の工業化と共に歩み続けた総合重機メーカーであるが、なぜ近年になって急進的な“全社的構造改革”を進めるのか。その総指揮官として、グループ内にゆさぶりをかけ続ける、宮永社長が抱く危機感の本質に迫った。(聞き手/週刊ダイヤモンド編集部 池冨 仁)

──近い将来に目指すべき姿として、「連結売上高5兆円の規模になる」と標榜しています。しかし、三菱重工業の中期経営計画は未達に終わることが多く、長らく3兆円前後の水準で推移していました。事実上、ほとんど成長していなかったわけですが、なぜ5兆円でなくてはならないのですか。

みやなが・しゅんいち/1948年、福岡県生まれ。東京大学法学部を卒業後、三菱重工業に入社。約17年間の広島製作所(工場)勤務を経て、99年に機械事業本部重機械部長に就任。2000年、希望して三菱日立製鉄機械の準備会社の社長となる。いったんは三菱重工を退社するも、06年に経営再建の手腕を買われて本社に呼び戻される。08年、取締役兼機械・鉄構事業本部長。11年、副社長兼社長室長。13年、取締役社長。14年4月より、取締役社長兼CEOを務める。気分転換は「理科系の読書」で、最近のイチオシは『古都がはぐくむ現代数学:京大数理解析研につどう人びと』(日本評論社)。
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 当然ながら、過去の先輩たちも、成長を志向していなかったというわけではないと思います。しかしながら、私は「やり方を変えるべきだ」という危機感を抱いています。近年は、自前主義を捨てて、国内外のM&Aに注力してきたからこそ、ようやく売上高4兆円が見えてきました。これは、3兆円の時代から改革を繰り返してきたことの延長線上にあります。ただ、もう少しスピード感を持って、大きく前に踏み出す必要があるということです。

 将来的に、世界で存在感を持って戦っていくためには5兆円ぐらいの規模が欲しい。例えば、まだ伸ばせる「エネルギー・環境」は2兆~2兆5000億円、同じく「交通・輸送」は1兆円に、倍増させる必要があります。一方で、急には増えない「防衛・宇宙」は5000億円、「機械・設備システム」が1兆円以上と考えれば、合計して約5兆円の規模になるという計算です。