今や、保険代理人がチャットを駆使して営業成績を競っているという中国。しかし中国には、いまだに外資系に不利な規制が多かったり、年代によってお客の保険に対する考え方が随分違ったりと、日本の保険ビジネスとは随分異なる側面がある。そのハンデを乗り越えてでも、激動の市場でシェア拡大を狙う外資系企業は多い。急速に「保険大国」の様相を呈し始めた中国には、それだけ魅力があるからだ。日本の生命保険市場で最大のシェアを持つ日本生命も、その1社。長生人寿保険有限公司の余部信也総経理に、現地の保険市場の実情と、今後の戦略を詳しく聞いた。

中国の保険市場では、「お客に信頼されることが日本よりもさらに重要になる」と語る長生人寿保険有限公司の余部信也総経理。国内最大手となる日本生命の取り組みは、中国に進出する日系生命保険会社の命運を占う意味でも注目に値する。

――中国の生命保険事業の歴史について、教えてください。

 文化大革命時代には、保険業界が事実上消滅していましたが、中国人民保険公司(PICC)により、1979年に保険事業が再開されました(生命保険は1982年から)。

 その後PICCの独占状態が続きましたが、88年に「深セン平安保険公司(現中国平安保険)」、91年に「中国太平洋保険公司」がスタートし、PICCの生命保険事業を継承した「中国人寿」と合わせて「中国三大生保時代」が始まりました。

 中国がWHO(世界保健機構)に加盟した後の対外規制緩和などにより、外資生命保険会社の参入も増え、現在は中国資本31社、外国資本28社の計59社が中国で営業しています。

――中国の生命保険市場の規模や成長性はどうですか?

 少し古いデータになりますが、08年の生命保険の収入保険料は約7300億元です。当時の為替レートで約9.7兆円に相当し、日本の生命保険収入保険料27兆円と比較して約3割の規模です。また市場も、2000年以降は平均約25%で成長していると言われています。

 世界における中国のGDPシェアが約6.3%なのに対して、収入保険料(生命保険、損害保険合計)のシェアは3.3%程度です。保険普及率(収入保険料÷名目GDP)も世界平均が約7.1%に対して、中国は3.3%となっており、まだまだ成長ポテンシャルがあることがわかります。