社内プレゼンはビジネスパーソン必須のスキル。ところが、多くの人が苦手ではないでしょうか?何度も却下されたり、差し戻しにあったり……。そこで、ソフトバンクで孫正義氏から「一発OK」を何度も勝ち取った著者が、秘伝のノウハウを詰め込んだ『社内プレゼンの資料作成術』を発刊。大きな反響を呼んでいます。この連載では、本書から、シンプルな資料で100%の説得力を生む、「超」実践的なノウハウをピックアップしてお伝えします。
考えさせないグラフが「優れたグラフ」
説得力のある社内プレゼンを行うために、最も重要なのは「データ(数字)」です。あなたの主張の根拠となるデータを、いかに決裁者の頭に刻みつけるか。これができるかどうかで、採択率は大きく変わってくるのです。
そして、データを見せるツールがグラフです。だから、グラフをどう見せるのかは、社内プレゼンにおいてきわめて重要なポイントなのです。
では、よいグラフとはどんなグラフでしょうか?
ずばり、決裁者に考えさせないグラフです。
グラフを読み解くために、頭を使う手間をかけさせないのが、よいグラフなのです。グラフを目にした瞬間に、「よい状況」なのか「悪い状況」なのかがパッと伝わり、最大でも10秒以内に「このグラフは何を表現しているのか?」が理解できるようにするのです。直感的に理解できるグラフにできればベストでしょう。
そのためには、社内資料に掲載されているグラフや、省庁がリリースする統計グラフなど、詳細なデータが記載されているグラフを、そのままスライドに貼り付けてはなりません。伝えたいことが端的に伝わるように、徹底的に編集しなければならないのです。
グラフの編集テクニックはいくつかありますが、ここでは、最も基本的な鉄則をご紹介します。
それは、「ワンスライド=ワングラフ」という鉄則です。
1枚のスライドにグラフがいくつも並んでいると、非常に理解しづらいスライドになります。それに、1つひとつのグラフも小さく表示するほかなく、それだけで見にくいスライドになってしまいます。
極端なケースですが、下のスライドをご覧ください。これは、ある会社の地方支店ごとの売上実績と目標達成率を示すスライドです。本社の売上管理部門では、各支社ごとにデータをとっており、それをそのままスライドに貼り付けたわけです。
しかし、これを見せられた決裁者は、「何を言いたいのか?」がまったく理解できません。キーメッセージを入れるスペースもないため、なおさら理解不能です。しかも、縦軸の単位も不揃いですから、簡単に比較することもできません。これは、完全なNGスライドです。
プレゼンに「必要なデータ」だけ見せる
では、どうすればいいのでしょうか?
まず、伝えたいことを明確にします。たとえば、売上実績上位3支店は「関東」「関西」「中部」だが、いずれも目標達成率が100%に届いていないことに警鐘を鳴らしたいとします。
とすれば、まず第1に、4月~7月の推移を見せる必要はありません。7月単月の実績で比較すれば済む話です。そして、下のスライドのように、「売上実績」のグラフと「目標達成率」のグラフを、それぞれ1枚のスライドに掲載します。なぜなら、1つのグラフに「単位」の異なる複数の要素を入れ込むと、わかりづらくなってしまうからです。
ちなみに、下のスライドのように、「売上実績」については棒グラフで、それに重ねるように「目標達成率」を折れ線グラフで表示すると1枚のスライドに収めることができますが、これはNGです。「売上実績」については左の単位(目盛)で確認して、「目標達成率」については右の単位(目盛)で確認するのは、面倒くさいですよね? 1つのグラフで1つのメッセージを伝えることに徹したほうが、わかりやすいスライドになるのです。
さらに、グラフの右側にはキーメッセージを置きます。「売上実績」のスライドでは、「トップ3 関東・関西・中部」と入れ、「目標達成率」のスライドでは、「関東・関西・中部 未達」→「要対策」と入れます。こうすれば、一目で言いたいことが伝わります。
なお、6つのグラフを掲載した元データ(この原稿の最初に掲載したスライド)は必ずアペンディックスに入れておいてください。そうすれば、決裁者から「それぞれの支社の詳細データを見せてほしい」などと尋ねられても、すぐに説明することができます。逆に言うと、詳細データはアペンディックスにとっておけばいいのですから、本編スライドのグラフは徹底的に編集して構わないということです。
なお、スライドには必ず「グラフのタイトル」を表記するようにしてください。場所はスライドの左上。「Zの法則」の起点に当たる場所にグラフ・タイトルを置くことで、「何をテーマにしたスライドなのか?」がすぐにわかるからです。もちろん、キーメッセージと同じように、できるだけ簡潔な言葉(13文字以内がベスト)にするように心がけてください。
(本稿は、『社内プレゼンの資料作成術』より一部を抜粋・編集したものです)