社内プレゼンはビジネスパーソン必須のスキル。ところが、多くの人が苦手ではないでしょうか?何度も却下されたり、差し戻しにあったり……。そこで、ソフトバンクで孫正義氏から「一発OK」を何度も勝ち取った著者が、秘伝のノウハウを詰め込んだ『社内プレゼンの資料作成術』を発刊。大きな反響を呼んでいます。この連載では、本書から、シンプルな資料で100%の説得力を生む、「超」実践的なノウハウをピックアップしてお伝えします。

キーメッセージを読ませてはいけない

 プレゼンのスライドにおいて、表紙のタイトルやキーメッセージは「読ませるもの」ではなく「見せるもの」です。

 1字1字読んで、ようやく意味がわかるのではダメ。パッと見た瞬間に、意味がスッと頭に入ってくるようにしなければなりません。決裁者の脳を「意味」を読み取ることに使わせるのではなく、提案内容を吟味することに使ってもらわなければならないのです。

 そのためには、どうすればよいか?
 方法は1つ。文字数を減らすことです。
 人間が一度に知覚できる文字数は、少ない人で9文字、多い人で13文字だと言われています。瞬間的に文字と意味を同時に把握することができる文字数は13文字が上限。これ超えると、意味をつかみ取るのに「読む努力」が必要になるのです。日本最大のニュースサイト「Yahoo!」のニューストピックの見出しも13文字が上限になっているのも、おそらく、これと同じ理由だと思います。

 だから、タイトルやキーメッセージは必ず13文字以内に収めるようにしてください。「文章」をつくる感覚ではなく、「Yahoo!」のニューストピックの見出しをつくることをイメージするといいでしょう。

 とはいえ、13文字以内という制限は、実際に書いてみるとなかなかハードルが高いものです。慣れないうちは、ついつい「文章」を書いてしまう。そこで、キーメッセージを13文字以内にするコツをいくつかご紹介したいと思います。

 キーメッセージを13文字以内にするためには、要するに、伝えるべき最重要ポイント以外の要素をすべてカットしていけばいいのです。

 まず、カットしていただきたいのが平仮名です。
「~のための」「~による」「~について」といった平仮名は不要です。また、「~を」などの助詞も省けるものが多いので、日本語としておかしくなければできるだけ取るようにしてください。

<例文(1)>

【before】売上未達を改善するための戦略提案について(20字)

【after】売上未達改善の戦略提案(11字)

 平仮名を減らしても意味は通じることがご理解いただけると思います。そして、それだけで文字数をかなり減らすことができるのです。

 また、伝えるべきポイントを明確にして、付随的な要素はすべてカットするようにしてください。

<例文(2)>

【before】今月も加入者は約4000件の増加が見込まれる(22字)

【after】加入者4000件増(9字)

 この例文の第1の問題は、主語述語のある文章になっていることです。キーメッセージは、このような文章にする必要はありません。いたずらに文字数が増えるだけですし、そもそも、文章にしてしまうと読む必要が生じます。決裁者に「読ませない」ためにも、文章にしないことを意識してください。

 そして、「今月も」「見込まれる」など付随的な要素はカットします。それは、口頭で伝えれば済むこと。キーメッセージは、決裁者にインプットしたいポイントだけに絞ればいいのです。

 さらに、「約4000件」の「約」も基本的に不要です。これも口頭で「正確には3983件です」などと補足すれば済むことです。あるいは、決裁者から正確な数字を求められたときのために、詳細の数字を記したアペンディックスを用意しておけば十分です。どうしても気になる場合には、フォントサイズ50程度で小さく「約」「およそ」と加えるといいでしょう。

 ただし、数字そのものは必ず残すようにしてください。数字は一目で理解できますし、何よりインパクトと説得力があります。パワースライドをつくるためには数字がきわめて重要。ですから、伝えたい数字は必ずキーメッセージに残しておくようにしましょう。

 最後に、13文字以内にする“裏技”をご紹介します。
 スマホや携帯電話でキーメッセージをつくるのです。
 パソコンはキーボードがあるので、いくらでも文字を打ち込むことができます。だから、ついつい文章が長くなってしまいがち。ところが、スマホや携帯電話で文字入力するのは面倒くさいですから、自然と文章を短くするようになります。「入力しづらい」という制約を、逆に利用するわけです。これは、意外と有効ですから、ぜひ、一度試してみてください。きっと13文字以内でキーメッセージをつくるコツがつかめるはずです。 

(本稿は、『社内プレゼンの資料作成術』より一部を抜粋・編集したものです)