『週刊ダイヤモンド』2015年11月28日号の特集は、「上場1500社の正しい株価」。8月以降の乱高下相場で右往左往し、大きな損失を出してしまった投資家も少なくないようです。そんな局面で求められるのは、株価が割安か割高かを正しく評価すること。そこで、最新決算を基に、上場1500社の「正しい株価」を算出しました。
2015年の春、東京都内の通信会社で働く38歳の山本浩さん(仮名)は、得意げな口調で、こう話していた。「投資は簡単です。歴史的な底値で買って、周囲が投資に関心を持ち始めたら売る。これだけです」。
山本さんは株価が低迷した2000年代、投資をしようか迷い、結局乗れなかったことを後悔していた。「だから、リーマンショック後には迷わず大量のETF(上場投資信託)を買いましたね」。
なんと山本さんは、資金の1500万円全てを株価指数連動型のETFにつぎ込んだ。数年間保有し、14年に全てを売却。利益はなんと1000万円を超えた。
だが、この秋に再び会ってみると、なにやら表情がさえない。
14年に全てのETFを売却した後、日経平均株価が再び1万円を切るまでは投資はしないと決めていた山本さんだが、8月以降の株価急落を見て、居ても立ってもいられなくなってしまったという。
個人投資家が「日経平均レバレッジ・インデックス連動型上場投信」(日経レバ)でかなりもうけていると聞いて、がぜん興味が湧いてきたのだ。
日経レバは日経平均の2倍の値動きに連動するよう設計されているETFだ。日経平均が下落しているときに買って、反発したときに売れば大きく稼ぐことができる。
ところが、8月に底値とみて大量に日経レバを購入したところ、そこからさらに相場が下落したのが大きな誤算だった。
目先のもうけ話に目がくらんで、自分を見失ってしまった山本さん。代償は大きく、100万円ほど損失が出てしまった。怖くなった山本さんは現在、300万~400万円のみを運用しているが、それでも、取材時には十数万円の含み損があり、「投資はしばらくお預けにするかもしれない」とつぶやいた。