ところが、安倍首相が本格的な国会論戦が始まる前に米国に法案成立を約束してしまい、岡田代表や他の保守系議員たちをも大激怒させてしまった。彼らは、「安保法制の全てに反対ではないが、安倍にだけはやらせない」と言い放った。その結果、民主党は安全保障政策で珍しく一枚岩になることができたのだ(第111回)。

「政策志向別野党再編」は、
安全保障政策を軸に行うべき

 安保法案成立後、共産党が政策の違いを脇に置いて、「集団的自衛権行使容認の閣議決定の撤廃」「安保法制の廃止」だけに絞って野党が連合して安倍政権を倒す「国民連合政府構想」を提唱し始めた。確かに、共産党は安保法制への反対で大きな存在感を発揮した。だが、野党間で本来、最も政策の違いが大きい安全保障問題だけで一致しようというのは、調子に乗りすぎだろう。

 民主党は、安保法制の国会審議で相当に感情的になり、「安保法廃止で野党が一致して選挙協力」と口走っていたが、次第に冷静さを取り戻してきた。安保法制反対のデモが全国に広がりながら、民主党の支持率は上がらなかったこともあり、岡田代表は、「共産とは安全保障政策などに大きな違いがあり、ともに政府をつくるのは無理がある」「民主を応援してくれる人たちの支持を失う協力では意味がない」と発言し、民主が共産と組めば保守の支持層が逃げると指摘するようになった。

 岡田代表の共産党に対する冷やかな発言は、安保法制の国会論戦を振り返れば、不思議なことではない。なぜなら、この連載で指摘したように、国会論戦を通じて明らかになったことは、安保法制に対する野党の考え方が、実は多様だということだからだ(第115回・下)。

 民主党は、集団的自衛権は「違憲」であるとして、安保法制の「廃案」を主張したが、国際的な安全保障環境の変化と、それへの対応の必要性についての認識は、安倍政権とそれほど変わらない。明確な違いは、「国民の命と平和な暮らしを守るのに必要なのは個別自衛権であり、集団的自衛権は必要ない」というところだと整理できる(第111回・2p)。

 維新の党は、実は「集団的自衛権の限定的行使容認」自体には賛成だ。つまり、集団的自衛権自体は「違憲」ではないと考えている(第111回・1p)。維新の党が問題視したのは、「集団的自衛権行使の要件をめぐり、自国防衛の目的を明確にする」ことだ。

 一方、「次世代の党」「日本を元気にする会」「新党改革」の3党は、自衛隊の海外派遣の際の「国会の関与」を重要視し、与党が法案の付帯決議、閣議決定でその旨を明記することで妥協し、法案採決に賛成した。この3党は安保法制を「合憲」とみなしている。つまり、「なにがなんでも反対」というのは、実は、社民党・共産党・生活の党だけなのだ。