安倍総理が無投票再選する一方、
橋下徹はなぜ「維新」を割ったのか?
永田町が騒々しい――。発端となった場所は、山形市だった。
9月13日投開票の山形市長選挙をめぐり、維新の党の柿沢未途幹事長が、民主党・共産党が支援する候補者を応援に行ったことが党内で問題視されたのだ。党の方針が定まらない中で幹事長が独走したことに対して、批判の声が高まった。
しかし、維新の党執行部が柿沢衆院議員を幹事長に留任することを決定。これが火に油を注ぎ、「維新純化」路線を志向する「橋下徹」派と、民主党との合流により二大政党の一翼になることを目指しているのではと噂される「政界再編」派とで党は真っ二つに。9月8日には松野頼久代表が柿沢幹事長と馬場伸幸国対委員長、片山虎之助総務会長に解任を通告し、維新はさらに迷走しているように見える。
そんな混乱する野党を後目に、同日自民党総裁選が静かに告示され、安倍総理の無投票再選が決まった。
「またか。政局はもううんざりだ」
民主党政権が崩壊し、みんなの党が瓦解し、日本維新の会から次世代の党が飛び出して、また維新の党が分裂する――。ここ数年、毎年のように野党が合従連衡を繰り返す姿を見れば、そんな声が聞こえてくるのも頷ける。野党に対する風当たりはますます厳しくなり、次の選挙の投票率はもっと下がってしまうかもしれない。
しかし、ちょっと待ってほしい。
日本では政党政治が行われている以上、政党の動きを理解することは投票するにあたって極めて重要だ。しかも最近、何万人もの人が「安保法制反対」を叫び国会議事堂の前に集まっているが、代議制民主主義においては、まず与党の政策に文句があるなら野党に期待せざるを得ない仕組みとなっている。デモなどを通じて直接政治に働きかける前に、間接民主制における代弁者である野党の動きに目を配ることは、我々有権者にとって最も大切なことではなかろうか。
もし、国会の前に集まった数万人の方々が、各選挙区の選挙の手伝いに来てくれれば、「お金のかからない選挙」を実現することも容易い。自分の政治信条を実現するための正しいエネルギーの使い方を理解するには、政党政治・代議制民主主義を理解することが不可欠であろう。
安倍自民党が思うままに強権を振るうなか、かつて政界再編の台風の目の一角と目された維新の党が分裂した今、果たして日本に二大政党が根づく見通しはあるのだろうか。今後、自民党に拮抗し得る野党勢力は生まれるのか。