それぞれがそれぞれの時間を
有効に使ってやっていく

マコ 2013年に、SASPL(サスプル)のメンバーに、
「こういう活動をしていることをクラスでは何と言われているの?」
 と聞いたら、
「デモ学生」
 と言われると。つまり、変わり者扱いされていたようです。
 でも今年は、すごく雰囲気が変わって、同級生が「今日行けたら行くわ」と言うようになったそうです。

広瀬 2011年からずっと見ていると、社会に大きな変化が起きている! デモ暮らしーが、デモクラシーに。

マコ 悲しいのは、SEALDsの話を私が出すと、すぐにいろいろクレームがくることです。反原発活動をやっている人から、「SEALDsは反日のスパイだから警戒しなければならない」というような、トンデモナイ長文メールがくると、憂うつな気持ちになります。なんだよ、これはと。

広瀬 あるんだよね。「そんなこと関係ない」と言っても。

マコ 渋谷や国会前でのアクションの様子をツイキャス(ネットの生中継)すると、被曝のことを気にする人たちから、
「若い子が、汚染された東京にマスクもせずにいるなんて」とか、
「本当に被曝の問題は大切なのに、何も気にしてない」
 というクレームが何度も何度もきました。
 個人的に、彼らのルーツは原発事故から立ち上がった若い人たちであることはわかっているので、それを説明したりもするのですけれど、SEALDsのアクションのツイキャス(ネットの生中継)をやっていると、アイコン画像が旭日旗のような人たちから「デモとかバカなの?」「ヒマ人?」「中国が攻めてきたらどうするの?」とか執拗に何度も何度もからまれます。
 最初は「現行の個別的自衛権で対応できますよ」とか丁寧に応答していましたが、何も会話が成立しません。
 そういう絡まれ方と別の絡まれ方もあるのです。
「SEALDsは被曝をわかってない!」
「SEALDsは原発事故のことを言わないのはおかしい!」
 というふうに、脱原発というアカウントの方が、何度も何度も執拗にからんできて「いや、彼らは原発事故のことも考えていて、過去にそういうアクションもしていて、でも今は安保関連法案のことで動いているんですよ」と説明しても、聞く耳を持ってもらえない。
 会話が成立しない、という点で、同じように感じてしまったことがあります。

広瀬 本当は仲間であるべき人たちが、叩き合うのは、よくないね。

マコ そうなんです。

広瀬 私はそういう言葉は、聞こえないようにしています。
 どの問題でも、誰かが何かやると、必ず足を引っ張るのが出てくる。「ツベコベ言わずに、一緒にやれよ」と、言いたいけど。

マコ 私のスタンスとしては、基本的には取材に徹しているので、アクションすることはありません。ただ、原発は、まったく不要ですし、なんでいらないか、どうするべきか、ということもしっかり取材してあるから、説明できます。だから、「いつでも何でも聞いてください」という構えでいます。

 デモと集会はもちろん大切です。けれど、私はまず事実を知りたい、自分で調べたいと思っています。それぞれがきちんと、いろいろ調べて考えて判断していくことが一番重要だと思うからです。その結果としてデモと集会があるのよね。

 私は、2011年4月に1回だけデモに参加したことがありました。
 4万人が参加したデモですが、立ち止まる時間が長く、5時間くらいほぼ立っているだけでした。そのとき私、5時間あったら、そのあいだに勉強できるなと、思ったのです。だから、4万人が5時間勉強したら、原子力に関する状況が変わるかもしれないと思ったのです。

広瀬 マコさん、あなたには、それが正解だと思います。そういう人がいたからこそ、これだけ日本の社会を変えられたのです。私も基本的には、調査第一主義です。原発必要論者を一人でも減らして、原発ゼロにしたいからです。
 そのためには事実を伝えて、そこから社会を変えたいと思って、本を書いてきました。しかし同時に、原発現地の人たちから学ぶことが多いので、現地のデモと集会には、できるだけ参加するようにしています。

マコ 私は今後も、原発の再稼働問題にしても、自分がどうアクションしていくかより、誰よりもいつまでも勉強して取材し続けて、報じていきます、という心構えでいます。

広瀬それを続けてくださいね。そして、私たちに事実を教えてください。
 一人ずつ、いろいろな生まれ育ち、年齢、知識と体験があって、個性がみんな違うからいいんです。それぞれが、それぞれの貴重な時間を有効に使って、やっていくことですね。それに尽きます。誰が正しいとか、どれがベストということはないですね。原発即時ゼロで一致していれば、それでいい。
一人ずつみんな違うんだから。その力を結集しましょう。

 5回にわたる対談、本当に楽しかった。でも、内容は深刻でもあります。改めて感服しました。ありがとうございました。
 最後に、読者にお伝えしておきますと、マコちゃんのお隣には、ずっとケンちゃんが付き添っていて、漫才師としてはボケ役の顔を装っているけれど、マコちゃんの話の途中で、すぐにパソコンからデータを取り出して、次々と私に見せてくれたのでした。
 名コンビです。人もうらやむ、おしどり漫才! おしどり万歳!

(おわり)