抜け毛、やせ毛、白髪を防ぐには常に髪を清潔にしておかなくては――。というわけで、毎日シャンプーで頭をゴシゴシ。中には、まるで親の仇にでも会ったように二度洗い、三度洗い。これでもかというくらい洗髪に精を出している人が少なくないようです。でも、せっかくの努力に水を差すつもりはありませんが、これはまったくの逆効果。アンチエイジング、とりわけスキンケアの権威として知られる宇津木龍一先生(北里研究所病院美容医学センター長)によれば「髪を健康に保ちたいのなら、むしろ、できるだけ洗わないようにすべき」なのだそうです。

 そんな馬鹿なと首を傾げられる方も、理由を聞けば納得されることでしょう。宇津木先生は肌の老化を促進する一番の元凶は“洗いすぎ”だといいます。人間の皮膚には自前の保湿成分をたっぷり含む角質層があり、これが外界からの刺激をプロテクトして細胞を常に瑞々しく保っているのです。ところが、洗いすぎると天然のバリアーであるこの角質成分までこそぎ落としてしまいます。皮膚は薄くなるとテカリが出るので、一見きれいに見えますが、これが大きな勘違い。むしろ乾燥して干からびた状態になった皮膚はキメを失い、カサカサしてきます。また刺激にも無防備になり、その結果炎症が繰り返されることによってシミ、シワ、クスミができやすくなるというわけです。

 頭皮細胞も同様です。洗いすぎると頭皮を守っている保湿成分層(角質)が消失。表皮の新陳代謝が低下し、炎症のできやすい脆弱な皮膚になっていきます。土壌が弱くなれば、そこに根を下ろしている木(髪の毛)も衰え、倒れやすくなってくるのは理の当然と言えるでしょう。

 宇津木先生ご自身も洗髪は滅多にせず、たまに行う場合もお湯で流す程度とか。それでいて50歳をとうに過ぎた今も頭髪は黒々、フサフサですから、説得力があります。臭いが気になる時は髪の毛だけをシャンプーで洗うようにすれば十分です。

竹内有三(医療ジャーナリスト)