「俺たちは結婚を約束した仲じゃないか?」

 男は結婚相手が人妻だということを棚に上げて、息を吸って吐くかのように暴言を畳み掛けてきたのですが、お金の貸し借りと相手の属性は関係があるのでしょうか?

 日本は法治国家です。男も日本に住んでいるのだから当然、すべての法律を守らなければならず、借用に関する法律(民法など多数)も例外ではなく、赤の他人同士でも恋人同士でも、そして婚約者同士でも等しく適用されるので「結婚を約束した仲じゃないか」と軽口を叩くことは認められないのです。

「俺と結婚できなくなった腹いせか?」

 男はこんなふうに意味不明な言い訳をしてきたのですが、「結婚すれば返さなくても良い」「結婚しないのなら返さなければならない」という問題ではなく、すでに貸主が督促しているのだから「結婚しようと、しまいと」返さなければならないのです。

「結婚の件と治療の件を混同しているのではないか?今さら結婚の件なんてどうでもいい!くれぐれも勘違いしないでくれ!!」

 広樹さんはそうやって声を振り絞ったのですが、心中を察すると私も心が痛みます。「妻の結婚」という違和感ありありの四文字を連呼すればするほど、広樹さんは自分の存在意義、夫としてのプライド、そして男としての自信をズタズタに切り刻まれているだろうことは想像に難くなかったからです。

強気が一転
返済の猶予を求めてきた男

「わかった、わかった。でも、もう少し待ってほしい」

 男はとうとう本当の事実を握りつぶし、おかしな解釈を押し付け、目の前の相手を丸め込むことができないと観念したのか、今度は「泣き落としの策」に切り替えてきたようです。女々しくも広樹さんに対して返済の猶予を求めてきたのですが、男は妻から借り受けた100万円をいつまでに返済するのか、具体的な返済期日を約束しないままでした。確かに返済期日の前に督促をするのはおかしいのですが、返済期日が不明な場合はどうしたら良いのでしょうか?