ついに伊方原発の再稼働に関して、中村時広愛媛県知事がGOサインを出した。
「1977年9月30日稼働」以来、38年経った「老朽化」の心配もさることながら、中央構造線上にそびえる伊方原発の危険性については、本連載でも再三触れてきた。
同時に、2015年8月に1号機、10月に2号機が再稼働し始めた川内原発とまったく同じ「加圧水型」の原子炉は、「沸騰水型」の福島第一原発とは比べものにならない危険性があると、本連載第21回で指摘した。
壮大な史実とデータで暴かれる戦後70年の不都合な真実を描いた『東京が壊滅する日――フクシマと日本の運命』が増刷を重ね、第6刷となった。
本連載シリーズ記事も、累計330万ページビュー(サイトの閲覧数)を突破し、大きな話題となっている。
そんななか、2015年10月23日に、広瀬隆氏がダイヤモンド社で緊急特別講演会を開催。当日は南相馬出身の人や高速バスで遠くからたくさんの人が会場を訪れた。
予定の1時間を大幅に超え、2時間にわたった講演会のエッセンスを凝縮してお届けする。さらに、現況から展望される今後の原発ゼロ時代の到来について、7回の連載記事をお届けする。
では、注目の第6回をお送りしよう。

「沸騰水型」と「加圧水型」は
どこがどう違うの?

広瀬 隆
(Takashi Hirose)
1943年生まれ。早稲田大学理工学部卒。公刊された数々の資料、図書館データをもとに、世界中の地下人脈を紡ぎ、系図的で衝撃な事実を提供し続ける。メーカーの技術者、医学書の翻訳者を経てノンフィクション作家に。『東京に原発を!』『ジョン・ウェインはなぜ死んだか』『クラウゼヴィッツの暗号文』『億万長者はハリウッドを殺す』『危険な話』『赤い楯――ロスチャイルドの謎』『私物国家』『アメリカの経済支配者たち』『アメリカの巨大軍需産業』『世界石油戦争』『世界金融戦争』『アメリカの保守本流』『資本主義崩壊の首謀者たち』『原子炉時限爆弾』『福島原発メルトダウン』などベストセラー多数。

 第2のフクシマが、九州の川内原発と四国の伊方原発で起ころうとしています。福島第一原子力発電所の原子炉は「沸騰水型」ですが、川内原発と伊方原発は、ともに「加圧水型」の原子炉です。その危険性については、ダイヤモンド書籍オンラインでたびたび説明してきました。

「沸騰水型」は、「ボイリング・ウォーター・リアクター」ですから、原子炉の水をそのまま沸騰させて、その水蒸気がタービンに送られ、その水蒸気でタービンを回し、発電機が回って電気が生まれます。この水蒸気が水になって、原子炉に戻ってきます。

 今回、動き出した川内原発と、動き出しそうな伊方原発は、それと違います。つまり、圧力を加えて、プレッシャーを高くして運転する原子炉です。英語では、「プレッシャライズド・ウォーター・リアクター」と言って、大変な圧力をかけて、原子炉の水が沸騰できないようにして、運転している。

 さきほどのリンク先に、加圧水型の原子炉で使われる「蒸気発生器」の危険性について書いてあります。この「熱交換器」で水蒸気をつくって、発電機を回します。

 川内原発や伊方原発だけでなく、佐賀県の玄海原発も、福井県の原発銀座の原発も(敦賀1号機を除いて)、北海道の泊原発も、再稼働候補は、みな加圧水型です。

恐ろしい!
美浜原発「ギロチン破断」事故

 これらを続々と動かそうと、政府と原子力規制庁が目論んできたのですが、「蒸気発生器」のギロチン破断事故が起こり、シビアアクシデント寸前まで進んだ大事故が1991年2月9日に、福井県美浜町の美浜原発2号機で起こりました。今の新聞記者、テレビ記者たちは、若いので、ほとんどこうした日本の重大事故を知りません。

 蒸気発生器のパイプが「ギロチン破断」して、スパンと切れたのです。そして原子炉が2度沸騰し、空焚き寸前まで進んで、20トン以上の冷却水が噴出しました。
 漏れた原子炉の水には、もちろん放射能が入っていました。そして汚染した水蒸気が、美浜町の空に吹き出してしまったのです。その水蒸気を、たまたま観光にきていた人が写真に撮っていたので、福井県内版の「朝日新聞」に出ました。しかし、「東京版」では、それを掲載しませんでした。マスメディアというものは、実に作為的ですね。このときは、ECCS(緊急炉心冷却装置)で水を投入して、かろうじて、大爆発を食い止めました。

 原子炉からタービンまで、どこかで熱を奪えなくなると、原子炉に熱がこもってしまうので、メルトダウンを起こします。地震などで大きな配管が破断すると、一気に大事故になります。