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コリア・ITが暮らしと経済をつくる国

マイナンバーってそんなに怖いもの?

韓国では半世紀前から国民生活に浸透

趙 章恩 [ITジャーナリスト]
【第1回】 2015年12月18日
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マイナンバーは普通に
生活している人の味方

 冒頭で述べたように、韓国の住民登録証の歴史は、半世紀近く前にまでさかのぼる。1968年に発生した朴正煕大統領(当時)の暗殺未遂事件で、その首謀者とされた北朝鮮のスパイを割り出すために、国は国民に住民登録番号を付与し、国民であることの証明書を持ち歩くよう義務付けた。つまり、日本のように最初から行政サービスの効率化を目指して作られた制度ではなかったということだ。

 それから試行錯誤を経て、今でこそ韓国では、本人確認は当然のこと、税、医療、教育、金融、保険、福祉、出入国など、あらゆる分野で住民登録番号が使われるようになった。

 そんな流れからか、韓国の住民登録の法律は厳しく、国民は全て住民登録番号を持つことが義務であることはもちろん、例えば、引越し後に転入届を出さず、住民登録証に新住所が記載されていない場合や、実際に居住していない住所で住民登録した場合、あるいは、17歳になっても住民登録証の発行を申請しない場合など、手続きを怠っただけでも自治体から過怠料が課されてしまう。

 住民登録証には、表に氏名や住民登録番号、生年月日、現住所、発行区役所名などが記載されているのだが、裏面には今も指紋押捺欄がある。

 私も、生まれた時からそんな“マイナンバー社会”で育って来た一人だ。「しかし」と言うべきか、「だから」と言うべきか、これまでの経験から、「マイナンバーは、普通に、まじめに、忙しく生活している人の味方である」というのが、率直な思いだ。

 例えば韓国では、本人は何ら手続きせずとも、税金を多く納め過ぎたら自動的に払い戻しが行われる。受けられる資格を満たしているのに福祉制度に申し込んでいない人には、行政から案内が来る。

 就職や不動産取引などで住民票や戸籍謄本、公金の納付証明などが必要になれば、パソコンやスマートフォンから電子政府にアクセスし、24時間いつでも申請が可能だ。交付された書類は、自宅のプリンタで印刷して提出する。電子政府を利用した場合、書類の発行手数料もほとんど無料だ。

 国際連合の「電子政府ランキング」で、韓国は3回連続1位を獲得した。こうした行政サービスが可能になっているのも、住民登録番号制度があってこそである。

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趙 章恩
[ITジャーナリスト]

ちょう・ちゃんうん/韓国ソウル生まれ。韓国梨花女子大学卒業。東京大学大学院学際情報学修士、東京大学大学院学際情報学府博士課程。KDDI総研特別研究員。NPOアジアITビジネス研究会顧問。韓日政府機関の委託調査(デジタルコンテンツ動向・電子政府動向・IT政策動向)、韓国IT視察コーディネートを行っている「J&J NETWORK」の共同代表。
IT情報専門家として、数々の講演やセミナー、フォーラムに講師として参加。日刊紙や雑誌の寄稿も多く、「日経ビジネス」「日経パソコン(日経BP)」「日経デジタルヘルス」「週刊エコノミスト」「ニューズウィーク」「リセマム」「日本デジタルコンテンツ白書」等に連載中。韓国・アジアのIT事情を、日本と比較しながら分かりやすく提供している。

コリア・ITが暮らしと経済をつくる国

韓国の国民生活に、ITがどれほど浸透しているか、知っている日本人は意外に少ない。ネット通販、ネットでの納税をはじめとする行政サービスの利用、公共交通機関のチケットレス化は、日本よりずいぶん歴史が古い。同時に韓国では、国民のIT活用に対する考え方が、根本的にポジティブなことや、政府が規制緩和に積極的で、IT産業を国家の一大産業にしようとする姿勢などが、IT化を後押ししていることも事実である。

一方の日本は、どうして国を挙げた大胆なIT化の推進に足並みがそろわないのか。国民生活にITが浸透している韓国の先行事例を見ながら、IT化のメリットとリスクを見極めていく。

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