これらの問題は政府文書にはほとんど書かれていない。政府は意図的に問題を隠している。しかしながら、これを放置している限り、今後いくら増税をしても、貧困や格差の問題は解決されないだろう。社会保障・税一体改革の基本は、より恵まれた者には我慢してもらうことである。公私の役割分担を明確にし、政府は恵まれない者や基礎的部分への対応に責任を持つ一方、中高所得には自助努力してもらうことである。

民間税調が提示する
当面急ぐべき税制改正

 前述の3つの基本的視点に立って、民間税調は、与党や政府とは異なるもう1つの税制改革案を提示している。本稿において、そのすべて紹介することはできないので、当面の税制改正として特に重要な点のみを紹介する(詳しくは、ホームページを参照)。

(1)軽減税率ではなく歳出面による逆進性対策

 消費税は逆進的であるが、この問題を消費税の枠内だけで処理しようとすることは誤りであるし、不可能に近い。一部の品目に軽減税率を適用したところで、消費税の持つ逆進性を解消することができないことは、ヨーロッパの事例からも様々な実証研究からもすでに明らかにされていることであり、現在議論されている食料品などに導入したところで、ほとんど効果のないものであることは、すでに民間税調でも明らかにしたところである。

 軽減税率の採用は、その適用基準を巡る様々なトラブルを誘発することに加え、不公正な業界要望を生み出し、税で票を買う従来型の政治に戻ることを意味し、税収面その他の弊害も考慮すれば、政治的にも理論的にも採用すべきではない。

 逆進性対策という観点からは、諸外国で見られる給付付き税額控除のような仕組みを導入することをむしろ優先すべきであろう。逆進性を問題にしながら、社会保険料の際立った逆進性を放置している政治こそ問われねばならない。

(2)租税特別措置の利用実態の解明

 法人税の現実の課税ベースは租税特別措置によって浸食されている。すなわち、日本では一定の政策目的のために多くの租税優遇措置が存在しているが、これらはいったん制定されると既得権化して、その必要性について十分検討されずに存続しているのが現状である。

 特別措置として残す部分についても、その利用実態を公表し、不要な措置や不適切な措置は積極的に廃止する必要がある。平成22年に租税特別措置透明化法が制定され施行された。この法律によって、内閣は国会に対し、毎会計年度に租税特別措置の適用状況等を記載した報告書を提出することになったが、それは優遇措置で受益している個別企業ごとの計数でないという点でまだ不十分である。