昨年12月30日に与党税制改正大綱が決定された。今回の税制改正議論で、これまでと最大の違いは、税制改正の主導権が党税調から官邸へと移ったということである。官邸が主導して一国の税制改正を決める、このことはわが国の統治機構上望ましいことである。
これまでのように党税調が決めるのでは、責任の所在が不明になるという問題があったが、それが解消される。しかし、そこに一抹の不安を感じるのはなぜだろうか。党税調には、ポピュリズムを排する厳しさがあったが、果たして官邸にその気構えがあるのだろうか。そこがこれから問われることになる。
評価できる法人税改革
平成27(2015)年度改正の最大の課題・注目は法人税改革である。「数年かけて税率を29%台に引き下げる」ことを目指して作業された。国・地方を通じた法人実効税率は、2015年度から32.11%(▲2.51%)に、16年度にはさらに31.33%(▲3.29%)へと引き下げられる。さらに17年度以降の税制改正で20%台までの引き下げを目指すことも明記された。
減税の財源は、15年度、16年度それぞれ2000億円程度の先行減税があるものの、基本的には法人事業税外形標準課税の拡充や繰越欠損金の縮小などの課税ベース拡大で捻出した。財政再建と経済活性化の両立を図る中では、「税収中立」型の改革は望ましいと言えよう。
課税ベース拡大で議論となったのは、法人事業税・外形標準課税の取り扱いであった。これを拡充していけば、税収中立で法人所得に対する税負担を引き下げることができる、いわば「魔法の箱」である。
結論的には、外形標準課税の付加価値割と資本割を2年かけて2倍に拡充して6600億円程度の財源をねん出し、それを税率の引き下げに充てることとした(外形標準課税の仕組みやこれに対する筆者の考え方は、第80回を参照)。
「魔法の箱」であるがゆえに、産業界からは「課税ベースが所得から付加価値に変わるだけで負担軽減にならない」「付加価値の大部分は賃金なので、賃金を増やすと税負担が増え、アベノミクスと矛盾する」との批判があった。