自民・公明両党が昨年12月の総選挙で公約に掲げた、消費税率引き上げに伴う軽減税率の導入。ところが、ここにきて制度の詳細をめぐり自民と公明の溝が深まっている。争点を整理しつつ、軽減税率の問題点を明らかにする。(「週刊ダイヤモンド」編集部 前田 剛)
「自民は、公明が(軽減税率の枠組みについて)いずれ折れると高をくくっていた」。軽減税率の適用対象品目の線引きをめぐって自民党と公明党の議論が紛糾している背景を、政治コラムニストの後藤謙次氏はそう分析する。
軽減税率とは、食料品などの生活必需品の消費税率を低く抑える措置のこと。2014年12月の総選挙で、自民・公明両党は10%への消費税率引き上げに伴う軽減税率の導入を公約に掲げていた。
本来は、12月初旬に固める16年税制改正大綱に盛り込むため、11月中に両党の税制調査会で制度の詳細を詰める予定だったが、本稿執筆時点(12月2日)で両党の議論は平行線をたどっている。
最大の争点は、軽減税率の適用対象品目の線引きだ。生鮮食品のみとする自民と、生鮮食品に加え、菓子と飲料を除く加工食品も含めるべきだとする公明とで対立が深まっている。
背景には軽減税率の財源問題がある。軽減税率は、特定の品目の税率を低くするため、対象品目を広げればその分、税収は減ってしまう。しかし、消費税率の引き上げによる増収分は、社会保障と税の一体改革に関する3党(民主、自民、公明)合意によって、全額を社会保障の充実に充てることが決められている。つまり、軽減税率導入に伴う減収分は、何らかの代替財源で手当てするか、もしくは社会保障に回す予算を削るかしかない。
左図で示したように、生鮮食品のみを対象とする自民案では約3400億円、一部の加工食品も含む公明案では約8200億円の減収となるが、現時点で手当てできている財源は約4000億円しかない。これは、低所得者向けの医療や介護などの自己負担額に上限を設ける「総合合算制度」の導入を見送ることで捻出されたものだ。