統合会見で希望に満ちた表情で手を合わせるJX、東燃の首脳たち Photo by Yasuo Katatae

石油元売り業界首位のJXホールディングスと4位の東燃ゼネラル石油が経営統合へ向け基本合意した。この再編は、電力・ガス業界など他のエネルギー企業にも大きな波紋を広げることになる。(「週刊ダイヤモンド」編集部 片田江康男)

 ガソリン販売でしのぎを削った敵同士で、経営スタイルも大きく異なり“犬猿の仲”だった2社が結婚に踏み切った──。

 石油元売り業界で売上高首位のJXホールディングスと同3位の東燃ゼネラル石油が、2017年4月の経営統合に向けて動きだした。ただ、石油元売り業界内からは再編は必然だったと受け取られている。

 確かに両社は、いや応なしに結婚に踏み切らなければならない課題を抱えていた。

 JXにとっては、三重苦からの脱却だ。真っ先に挙げられるのは長年指摘されてきた低収益体質の改善。実際、規模で劣る東燃が15年4~9月期で228億円の経常黒字だった一方で、JXは同期間で277億円の経常赤字となった。原油価格の下落によって在庫評価損を計上したことが主な原因だが、事情は東燃も同じ。両社の明暗を分けたのは効率性の違いだ。

 国際石油メジャーの米エクソンモービル傘下だった東燃は、欧米流のコスト管理を徹底し、精製から販売までの効率的なサプライチェーンを構築し、販売力を磨いてきた。JXグループ幹部が「ガソリンスタンド1店舗当たりのガソリン販売量が、東燃とJXで2倍近いことも珍しくなかった」と打ち明けるほど、JXの非効率経営はかねて問題視されてきた。

 それだけではなく、JXはさらなる収益悪化の火種を抱えている。

 グループ傘下のJX日鉱日石金属が開発してきたチリのカセロネス銅鉱山だ。06年に権益を獲得して以来総額42億ドルの巨費を投入し、日本政府もバックアップする大型プロジェクトだ。

 ところが、中国経済の減速などから資源価格が急落。今期想定した銅価は1ポンド当たり2ドル70セントだったが、現在は2ドルを切る水準だ。このままでは、今期予想していた金属事業の経常利益710億円の3割程度しか稼げない可能性が高く、前期の800億円に続き、今期も巨額の特別損失計上のリスクが高まっている。

 JXの木村康会長と内田幸雄社長は統合会見の席上で、財務基盤を強化したいと口をそろえたが、脳裏にカセロネス銅鉱山の件があったことは想像に難くない。

 加えて、国内に7カ所もある製油所の過剰問題だ。国内の石油製品需要は、19年度には15年度比約8%減と予想されており、今後ますます製油所の供給過剰感は高まる。JXは首都圏の需要を賄うために神奈川県・根岸などに製油所を持ち、東燃は神奈川県・川崎に製油所がある。統合で「長年の課題だった根岸の縮小に手を付けられるはずだ」(JXグループ幹部)。