「老後破産」ブームの背景には……

 この数ヵ月、複数のテレビ番組から「老後破産」をテーマとして番組を作りたいから協力してほしいと電話があった。私が求められる役割は何かを尋ねたところ、多かったのは「年金も貯金もほとんどなく破産した高齢者を紹介してほしい、または破産した人の実例をスタジオで解説してほしい」との返答だった。

 同じような依頼が立て続けにあったのは、あるテレビ局が9月に放送した「老後破産の現実」という番組が反響を呼んでいることが背景にあるようで、同様の企画を立てる番組が増えている。

 私としては受けられない種類の仕事なので、いずれもお断りした。相談業務は守秘義務があるし、相談者をマスコミに紹介することは一切しないことを会社のルールとしているからだ。

 依頼は断ったけれど、番組の流れがどうなるのか知りたかったので「生活に困窮した高齢者の様子をVTRで紹介して、その後はどうなるのか。たとえば、スタジオで視聴者に向けて老後資金作りのポイントは解説するのか」と聞いてみた。するとある番組のスタッフは「いえ、特にしません。今回は破産した高齢者のケースを取り上げるだけです」と言う。

 えっ、ソリューションなし? 見終わった後、何とも言えない気持ちになりそうな企画だ。これでは老後貧乏予備軍の40~50代がテレビを観ていたとしても、他人事として終わってしまうだけだろう。

 今の40代や50代が年金生活を迎えると、老後に破産するほどの深刻な状況にならなくても、老後の生活が貧乏になる人は確実に増加すると思われる。これまでもこのコラムで書いているように、今の40~50代は消費が好きな世代であるし、親世代よりも多額の子どもの教育費や住宅ローンという重荷を背負っているからだ。

 誰だって老後に貧乏な生活を送りたくない。大事なことは昨今の「老後破産」ブームを他人事で終わらせずに、少しずつでいいので今できる対策に取り組むことだ。今年も終わりに近づいてきたので、年末年始のお休みには第3回で提唱した「家計の年間決算書」作りに取り組んでもらいたい。今回はその決算書からわかる「お金が貯まらない人の傾向」を5つ紹介するので、それぞれの項目で「ドキッ」としたら、反面教師にして来年から改善に取り組んでもらいたい。