「普天間」と「政治とカネ」の問題に揺れた鳩山首相と小沢幹事長の突然の辞任が、7月の参議院選挙の展開に影響を与えるのは必至だ。では、実際にどのような影響が考えられるのか。有権者の投票行動の行方、選挙の争点、新政権の課題について、小林良彰・慶応大学法学部教授に話を聞いた。(聞き手/ダイヤモンド・オンライン 林恭子)

辞任理由を「政治とカネ」の問題にスイッチ
小沢幹事長を道連れにした鳩山首相の深謀遠慮

――偽装献金問題発覚後や普天間問題が泥沼化していた最中も、高まる「鳩山降ろし」の声を退けてきた鳩山首相が、突然辞意を表明した。7月の参院選が迫ったこのタイミングに辞任する理由やその意味をどう捉えているか。

こばやし・よしあき/慶應義塾大学法学部教授。専門は政治学・政治過程論。1954 年、東京都出身。慶應義塾大学法学部政治学科、同大学院法学研究科修士・博士課程修了(政治学)、法学博士。慶應義塾大学専任講師、助教授を経て1991年より現職。精緻なデータ解析による選挙分析や政治問題へのコメントで有名だが、全国各地へのフィールドワークを重ねるなど、自治体の現状と問題点についても知悉している。『現代日本の政治過程』『選挙制度』『公共選択』など著書、編著多数。

 鳩山首相は客観的にみても、辞任せざるを得ない状況にあったことは確かだろう。やはりその背景には、数は少ないが非常に重要な役割を果たしていた社民党の連立離脱の影響が大きい。

 まず、社民党の連立離脱によって参議院では与党が過半数を維持できない委員会が生じていたため、テーマによっては法案が通らない可能性もあった。また、野党側から問責決議案が出された場合、民主党の参議院議員の数人が欠席をすれば、可決してしまう可能性もあった。つまり、危機的な状態だった。

 こうした状況下で、参議院選挙後に国民新党の議席数を合わせたとしても与党で参議院の過半数を維持できなかった場合、複雑な「ねじれ国会」となることは必至だった。参議院を通過しなかった法案は、衆議院において再可決を行うことができるが、社民党が離脱した現在、与党は衆議院で再可決に必要な3分の2を下回っている。要するに、事実上政治が止まってしまう状況も懸念されていた。

――鳩山首相のまま参院選に臨んでいたら、どうなっていたか。

 どう考えても議席を減らし、混乱は必至だった。そうなれば当然、参院選挙後に鳩山首相は辞めざるを得ない。しかし、選挙の敗北をもって辞めるというのは、政治家の最後としては好ましいものではない。

 一方の野党側は、鳩山首相の悪いイメージを有権者に植え付けたまま選挙をしたかったわけだから、「もう辞めるには間に合わない」タイミングで問責決議案を出すことを計っていたかもしれない。まさにその先手を打って鳩山首相が辞めたことは、ある意味鮮やかであり、時期としてはこのタイミングしかなかった。