外食、介護業界の成功企業として一目置かれていたワタミ。なぜこのような事態になってしまったのか Photo by Ayako Suga

主力事業の1つである介護事業の売却決断、2008年に起きた過労死事件損害賠償請求の和解という2つの大きな契機を迎えたワタミ。一時は外食産業と介護事業の成功企業と一目置かれていた同社はなぜ、このような事態に陥ったのか。

先日、ソニーや東芝など注目企業の真実を決算書から紐解く『会計士は見た!』を出版した公認会計士の前川修満氏が、ワタミに起きた二大事件の背景を決算書から解説する。

「ワタミはブラック企業」
イメージを植え付けた過労死事件

 先日、2008年に起きたワタミの過労自死事件の損害賠償請求訴訟が、和解により終結しました。当初は、「道義的責任はあるが、法的責任はない」として争う姿勢を示していた創業者の渡邉美樹氏も、和解当日、清水邦晃現社長とともに和解協議の場に現れ、遺族に謝罪しました。

 なぜ、このタイミングでの和解となったのか。

 筆者は、ワタミの決算書を読みながら、その背景にはこの2年の急激な業績の悪化があると、強く感じました。

 上記は、2004年度以降のワタミの、売上高と各種利益をまとめた表です。これを見ると、2013年度には当期純利益(法人税等を支払った後の最終損益)が49億円の赤字となり、翌年の2014年度には更に業績が悪化した結果、128億円の赤字を計上していることがわかります。

 この赤字額は、それまでの黒字額と比べてみても、ワタミにとっては非常に大きな負担となるものでした。事実、この2年の赤字がワタミに与えたダメージは凄まじく、それまで積み上げてきた留保利益は一気に食いつぶされ、その額はマイナス6億円にまでなってしまっていました。

 つまりワタミは、ここで業績悪化に歯止めをかけなければ、近い将来、確実に債務超過に転落し、破綻してしまうという、ギリギリの状態に追い込まれていたのです。