「ブラック家庭」とも言える劣悪な環境から、「一流大学に入れば、人生は変わる」と寝食も忘れて勉強し、早稲田大学に入学した著者。輝かしい未来を期待したものの、バイトに明け暮れて怠惰な学生生活を送った結果、卒業後に待っていたのは目の前の金だけを追いかけるブラックな職場だった。本書は、自身の半生をつづった電子書籍が話題を呼んだことをきっかけに、改めて紙の書籍として出版された。
9年間にテレビ番組制作会社、風俗店店長、AV女優マネージャー、ヘッドハンターなど14の職種で働く。いずれも労働環境は厳しく、風俗店では恐喝や覚せい剤の使用など、明らかな犯罪行為にも手を染めた。手元に金があふれた時期も心は満たされず、「不幸の連鎖」がずるずると続く様が描かれる。
しかし、そんな著者を救ったのはある身近な、そして人間として生きるうえで「最も大切なもの」だった。そこから「バカはバカのままだけど、私は変わった」という実感を得る。幸せをつかむまでの道のりが丹念に描かれ、確かな人生の重みが感じられる一冊だ。
※週刊朝日 2015年12月18日号