それでもドルは安全か

2013年10月、欧州中央銀行(ECB)と中国人民銀行(中央銀行)は、通貨スワップ協定を締結。国際決済銀行(BIS)によると、人民元は2013年、過去10年で世界で最も使われた通貨トップ10の一つになった(2004年は35位だった)。

基軸通貨の交代は、一般に考えられているよりも早く起きる可能性がある。

ドルも1914年まで、まったく国際的な通貨ではなかった。アメリカ経済はすでにイギリス経済の2倍の規模になっていたが、世界の銀行はイギリス政府だった。アメリカにはドルが国際的な通貨になるためのインフラもなかった。

しかしこの年、連邦準備制度が構築されて状況が大きく変わった。一方、現代の中国政府は、2020年までに北京と上海を世界の金融センターにすると目標を定め、人民元を世界の基軸通貨にしようとしている。

金融の多極化がどのくらいのスピードで起きるかは、アメリカ国内の動向にも左右されるだろう。2013年に連邦政府の債務上限引き上げ問題で、政府機関閉鎖など政治的混乱が生じたとき、アメリカはドルの地位を危険にさらしているという批判が起きた。それでも、ドルへの信頼は、まださほど失われていない。

人民元の取引がまだ限定的なのと、ヨーロッパの景気回復が遅れていることもあり、ドル以外に安全な投資先があまりないのだ。2008年の世界同時不況の原因はアメリカの銀行だったが、アメリカの国債と株式はいまも安全な逃避先と見られている。