横浜DeNAベイスターズが本拠地である横浜スタジアムの運営会社の買収に乗り出している。総額100億円近くを要するとみられるこの買収劇は、果たして英断なのか、無謀なチャレンジなのか。球団の社長である池田純氏にスタジアム買収の真の意図を聞いた。
球団を慢性的に赤字にする構造
11月下旬に発表された横浜DeNAベイスターズによる横浜スタジアム買収のニュースは、古くからの横浜ファンだけでなく、多くの野球ファンや横浜市民の注目を集めた。ベイスターズは、TOB(株式公開買い付け)と呼ばれる手法で、来年(2016年)の1月20日までに球場運営会社の株50%超を取得することを目指すとしている。
球団とそのホーム球場が一体経営となっているのが一般的である米メジャーリーグに対し、日本球界において完全な一体経営を実現しているのは、広島カープと福岡ソフトバンクホークスの2球団のみである。横浜スタジアムの場合、所有者は横浜市であり、運営者は「株式会社横浜スタジアム」となっている。今回の買収の対象は運営会社であり、買収に成功しても球場の所有権は引き続き横浜市に残ることになる。
横浜スタジアムが設立されたのは、今から37年前の1978年。ディー・エヌ・エー(DeNA)が球団オーナーとなったのは4年前の11年だ。この4年間、横浜DeNAベイスターズは「横浜スタジアムとの共存共栄」を掲げながら、観客数を大幅に増やしてきた。DeNA参入以前の年間動員数が110万人で、今年は181万人超。4年間で実に6割も観客数を増やした計算になる。これほどの数字を残しながら、なぜここに来てあえてスタジアム運営会社を買収する必要があるのだろうか。
「今年のスタジアムの稼働率はほぼ90%に達しています。平均して常に9割の客席が埋まっているということです。にもかかわらず、球団は数億円の赤字を計上しなければならない状態です。初年度の赤字が30億円近かったことを考えれば大幅な改善ではありますが、それでも赤字は赤字です。現在の動員数はほぼ天井とみていいでしょう。したがって、入場料によって球団の収益をこれ以上伸ばすのは難しいと考えるべきです。一方、球場運営会社は一貫して黒字経営が続いています。さまざまな議論を両社で繰り返してきましたが、この構造を変えるには、運営会社を買収し、一体経営を実現する以外に方法がないという結論にいたりました」
横浜DeNAベイスターズの池田純社長はそう話す。球場の改修をする、あるいは席数を増設してキャパを増やすといった選択肢もあったが、それを実現するためには、球場の所有者である横浜市と交渉をしなければならない。しかし、運営者ではないベイスターズにこれまで直接の交渉権はなかった。今後も折に触れて必要となると考えられる市とのコミュニケーションの主体となるためにも、球場運営権を獲得するという選択は必然であった。