もしそうしたことが加速して、先ほど言ったような金融の仕組みや、あるいは飯田先生がおっしゃったような、人口減少の中での産業効率化のプレッシャーなどが相まっていくと、日本でアメリカを超えるスピードで新しいエリアが出てくる可能性がある。当然、「データサイエンティスト」(データ分析職)や「マーケティングテクノロジスト」といった新しい雇用も生まれる。

 日本は今、何か閉塞感に包まれていますけれども、そういう形で好循環を作っていくことを2016年から始めると、もうちょっと活力も出てくるんじゃないかと思います。

飯田 AI研究会も社会科学者と自然科学者の横断でどんどんできていますね。ただし、このAI化には怖い面もある。

「仕事の変化で社会が二極化の恐れも」
「世界が一気に変わるかもしれない」

飯田 「未熟練・低文化資本・低賃金」から「高学歴・高文化資本・高賃金」と並べていったときに、産業革命以来のこれまでの機械化というのは、だいたい一番下の労働を潰していくということだったわけです。その場合、みんな一歩階段を上れば、つまりは少しだけ熟練すれば何か職があった。ところが、現在起こっている、今後どんどん進んでいくAI化では、“真ん中”が一番要らないんですよね。

 真ん中が要らなくなって、上の方に逃げる人と、下の方の労働に逃げる人が出始めると、社会分断がかなり大きくなる。その意味で言えば、今マニュアル労働は人手不足のせいで給料がいいのですが、これは結構危険なことです。どんどん仕事の範囲が減っていき、かつ新興国にも仕事を奪われて、逃げ場がない。かといってずっと作業員をやっていた人に「明日からAIのエンジニアになってください」というのも無理です。

 さらに、文化資本というのは学歴や教養などのことですが、非常に世代を超えて継承されやすい。これが二極化を生まないようにするというのが、一番の課題ではないかと思います。

小黒 そこは負の側面ですね。同時に、ポジティブに考えれば、“威力がすごい”という部分もある。怖い面でもあるのですが、世界が変わるかもしれません。

飯田 本当に衝撃的なことが起きかねない。ある時「ドカン!」と伸び始める。コンピューターも、ノイマン型が発明されてから「こんなの何の役にも立たない」と長いあいだ言われ続けた。今、“AIと喋る”というイベントがすごく多いのですが、はっきり言ってまだ“喋って”ないんですね。MCの人が機械に合わせてあげているだけのことは多い。でもある時いきなり困らないレベルになってしまうんじゃないか。始まったら速いと思うんです。

小黒 ええ、みんなが使うようになってそのデータがクラウドで蓄積されると速いですよね。いわゆる「シンギュラリティ」(技術的特異点)と呼ばれる現象です。もしかしたら、話すだけではなく、書いたりも……そうなってくると我々も……。

飯田 要らないんじゃないかと(笑)。でもさすがに、その頃には僕らは定年が近くなっていると思います(笑)。