製品力 < マーケティング力
アップル製品がヒットする秘密

「ジーンズの前ポケットのさらに内側にあるこの小さなポケット…。いったいこのポケットは何のためにあるのかボクにはわからなかったんだが…このポケットはコレをいれるためにあったんだね!!」

 アップルのスティーブ・ジョブズCEOがこう言いながら、“iPod nano”をその小さなポケットからおもむろに取り出して披露した瞬間、会場から割れんばかりの拍手が起こったのを覚えている方も多いのではないでしょうか。

 iMac、iPod、iPhone、iPad…と立て続けにヒット商品を世に送り出してきたアップルのマーケティングは、トップであるスティーブ・ジョブズ自らが壇上に立って行なうプレゼンテーションから始まっています。

 アップルがマーケティングに大きな力を注いでいるのは、そのスケジュールが告知された時点でマスコミ各社が楽しみにしているというこの「トッププレゼン」だけに限りません。細部に至るまで管理されている「ブランディング」からもうかがい知ることができます。

 ブランドロゴはもちろん、CMやアップルストアによるイメージ訴求、ひと目でアップル製品だと認識できるような視覚に訴えるデザインや色づかい、利用者の聴覚までをも意識していると思わせる操作音、製品を梱包する箱に至るまで、あらゆるものに対するこだわりを感じます。現在は、名だたるIT系企業が導入している“エバンジェリスト”(自社製品の啓発活動を行う職種)も、その先駆けはアップルだという話もあります。

 製品の機能面がヒットの要因のように考えてしまいがちですが、ベンチマークすべきポイントとして忘れてはならないのは、このように徹底的なマーケティング力によってその(もともと高い)製品価値を、より最大化させている手法でしょう。

 少し古い話になりますが、かつてペプシコーラが最初の躍進を遂げた1970年代も、マーケティングの強化がその原動力でした。記憶されている方も多いかも知れませんが、「ペプシチャレンジ」という大キャンペーンを仕掛け、CMによる比較広告等(日本ではうけが悪かったようですが)の効果もあり、コカ・コーラの牙城を切り崩していきました。