EUは、ギリシャに対し、2010年・2012年にECB、IMFの協力を得ながら合計2400億ユーロ(約31兆円)もの金融支援を実施し、その支援の条件として公務員の給与削減や人員整理、国有財産の売却など厳しい財政緊縮策の実施を求めた。昨年1月、ギリシャに財政緊縮策に反対する急進左派連合政権が誕生し、首相の座についたチプラス氏との間で再度の支援をめぐってのつばぜり合いが続いていたが、結果的に7月に860億ユーロ(約12兆円)に上る第3次金融支援が合意されて今に至っている。

 しかし、今回もギリシャは財政緊縮策を受け入れざるを得ず、しかも総額550億ユーロの国有財産が民営化基金に移されてEUの監視下に入ることになった。ギリシャ国民から見れば、まさに屈辱的な条件と言えるだろう。

 問題の根幹は、ドイツなど北側の欧州諸国に比べて競争力が弱い南欧諸国が、競争力に比して割高なユーロを受け入れざるを得ず、そのために財政均衡のためには常に緊縮財政に陥ってしまうということであり、今のままだと、競争力に比して割安な通貨を持つことになるドイツの独り勝ちになってしまうということだろう。

ギリシャのユーロ離脱は
世界恐慌の引き金になる

 それでは、仮にギリシャがユーロから離脱し、元の自国通貨であった「ドラクマ」に戻るとしたらどうだろう。一見すると、これで一気に競争力に見合った安い為替レートを取り戻すことができるし、財政政策にも自由度が高まるのでいいこと尽くしのように見えるかもしれない。現に、昨年7月の第3次金融支援の前には、ドイツ国内にもギリシャを離脱させるべきとの議論があった。

 しかし、実際にはそれほど簡単なことではない。既にEU内外で企業活動はクロスボーダーになっている。ギリシャがユーロを離脱し、ユーロに対して大幅に価値を切り下げられたドラクマが復活した場合、ギリシャ並びにギリシャ企業が負うユーロ建て債務は巨額に膨れ上がることになる。さらに、国家ないし企業間で締結されている、無数のユーロ建ての契約をめぐって紛争が頻発することになり、企業活動は停止してしまう。

 また、現実的には、同国のユーロ離脱の計画が世の中に少しでも漏れてしまった時点で、ギリシャ国民や企業は一気にユーロ現金の確保に走り、銀行が持たなくなるだろう。流通する新通貨ドラクマの印刷や鋳造を極秘に進めるわけにもいくまい。

 このように、仮にギリシャ一国のユーロ離脱でも相当に大きな影響を持つのだが、同国が離脱した場合、同じような問題を抱えているポルトガルやスペイン、場合によってはイタリアの離脱も現実味を帯びてくるため、影響は加速度的に拡大し、ユーロの崩壊に繋がりかねない。