ケスター ベンチャーリパブリックのどこが面白いと思ったか。3つあります。

 1つめは、2人の起業家(柴田啓氏と柴田健一氏)は、大企業に在籍したままで、ベンチャーリパブリックを創業したことです。これはアメリカの商慣行とは大きく異なっています。アメリカでは、起業家は二足のわらじをはきません。起業に必要なリソース(ヒト・モノ・カネ)は、起業家がゼロからかき集めてくる、というのが通例です。大企業、しかも自分が働いている企業(筆者注:ベンチャーリパブリックの場合は、三菱商事)に出資を募るケースは稀です。なぜなら、出資をしてもらうためには、ビジネスアイデアを明かさなければなりませんから、大企業にアイデアごととられてしまう恐れがあるからです。

 このケースを通じて、世界各国にはその国特有のビジネス慣行がある、ということを知ることができますから、ハーバードの学生にとっても有益だろうと思いました。

 2つめが、ベンチャーリパブリックが2008年にIPOを実施したことです。同社が日本の株式市場に上場するまでの過程も興味深いと思いました。

 3つめが、同社は、上場からたった3年しか経っていないのに、2011年にMBO(マネジメント・バイ・アウト=経営陣と従業員が上場した株式を買い戻すこと)を実施して、再び非上場になったことです。これほど早く、なぜMBOを実施したのか、アメリカとは違って日本では一般的でないMBOという手法をなぜ使ったのか、非常に興味を持ちました。

佐藤 このケースから学生は何を学ぶことができるのでしょうか。

ケスター まずは企業価値の算出方法です。ベンチャーリパブリックは2008年8月に上場しましたが、その翌月に世界的な金融危機が起こり、創業者たちは想定していたような成長戦略を描けなくなりました。そこで2011年、再び非上場にしたわけです。

 2001年の創業から2011年までそれほど急成長しているわけではないが、将来、成長する潜在能力はある。こうした会社の価値をどのような基準で算出したらいいか、いくらが適正価格か、を学生には考えてもらいます。

 また、創業者と他の投資家との利益相反を防ぐためにはどうしたらいいかについても、議論してもらいます。創業者は会社の内情に詳しく、他の投資家が知り得ない情報もすべて持っています。創業者は出来るだけ安く買い戻したいし、投資家は出来るだけ高く売りたい、という状況の中で、利益相反をどのように解決していくのか、というのは非常に難しい問題なのです。

佐藤 ベンチャーリバプリックのケースはどの授業で教える予定ですか。

ケスター まだ未定ですが、エグゼクティブプログラムか、MBAの必修科目「ファイナンス」で教えたいと考えています。