日本と日本企業が
認識すべき地政学リスク
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今年は山積するリスクが火を噴くことが懸念される年となりそうである。既にサウジアラビア・イラン関係の緊張や北朝鮮による「水爆」実験など、潜在リスクが表面化しつつある。
先日、米国のコンサルティング会社ユーラシア・グループが今年の世界の十大リスクを発表した。グローバルな業務展開をしている日本企業も世界の地政学リスクに敏感でなければならない。
同時に、日本を取り巻くリスクには日本特有の地政学的要因もあり、世界のリスクとは異なる面があることにも留意したい。ここでは日本の目から見た地政学リスクの評価を行いたいと思う。もちろん、リスクを認識したうえで、それが現実のものとならないよう対応を考えていくことこそが重要である。
リスク1:米国の指導力の一層の低下
その行方は他の世界のリスクも左右する
今日の国際情勢の流動化を生んだ最大の要因は、米国の対外姿勢の変化であろう。ブッシュ前大統領は軍事力を前面にかざした対外政策を追求したが、アフガンとイラクでのあまりにも長期にわたった戦争の結果、多大の人的・財政的コストと米国社会に凄まじい疲弊感を生み、オバマ政権の対外姿勢は大きく変化した。
オバマ政権は関係国との協調に基づく外交を優先し、キューバとの国交回復やイランとの核合意などの具体的成果を生んだ。その反面、ウクライナ問題やシリア問題、ISとの対峙などで、本格的な軍事介入を躊躇する姿勢が力の空白を生むこととなり、情勢の流動化に繋がっていることも否定できない。これは米国の力の衰えと言うより、米国の指導力の低下を印象付けることとなった。同盟国日本にとっては深刻な問題である。
本年、米国は大統領選挙のキャンペーンに明け暮れることになるが、ポピュリスト的で排外的とも言える主張が多くの人々の支持を得ている。共和党サイドでは、従来は最終的に候補者として選ばれることにはならないと考えられていたトランプ候補の勢いが未だ衰えていない。民主党サイドでも一時圧倒的な優勢を伝えられていたクリントン候補と、極めてリベラルな主張を掲げるソンダース候補の差が小さくなっていると伝えられる。