誰が最終的な候補者になるのか、誰が大統領に選出されるのかにかかわらず、国内の極端な保守とリベラルの二極化は強い対外政策の妨げとなるであろうし、現在の選挙戦キャンペーンを見る限り、米国の世界における指導力が回復していくとも思えない。

 この一年で米国の指導力を左右する象徴となるのは、TPPの議会承認の成否である。議会の審議にかけられるのは、大統領選挙後の12月のレームダック会期より前ではないとも言われているが、米国議会が批准に至らず、発効の見通しがなくなる結果のダメージはあまりに大きい。TPPは自由貿易協定にとどまらず、自由な資本主義経済体制のルールを定めるという意味で戦略的意味合いが強い。

 米国の指導力の一層の低下は世界中で情勢の流動化に繋がっていくのだろうし、以下に述べるようなリスクを抑えていくことがますます難しくなると言えるのだろう。

リスク2:北朝鮮有事リスク
懸念を高める金正恩ワンマン体制強化

 1月6日の北朝鮮「水爆」実験は、地域の安全保障環境を一層悪化させた。この核実験から読み取るべきは、予見性がなく衝動的とも言える金正恩体制の行動様式である。

 これは昨年8月に非武装地帯への地雷敷設により韓国兵士を負傷させる事件を起こし、その後事態収拾のため妥協的な行動をとったことや、中国との関係修復も念頭に北京に派遣したモランボン楽団を急きょ帰国させるといった行動にも象徴的に表れている。昨年後半の北朝鮮の対話姿勢にかかわらず、国際社会の激しい反発が予測できる核実験を実施したのは、いかにも矛盾した動きと見える。

 金正恩体制が成立して以降、数多くの党・軍の幹部の粛清が伝えられているが、従来と異なるのは、権力基盤として軍や党といった組織を強化するのではなく、金正恩第一書記のワンマン的体制強化と見られていることである。北朝鮮の行動が若い指導者の衝動的判断に委ねられている面が強いとすれば、それは地域にとって深刻なリスクとなろう。北朝鮮の軍事的挑発がエスカレートして、いわゆる朝鮮半島有事に繋がることが懸念される。

 このような地域安全保障にとっての深刻なリスクを抑え込むためには、関係国、とりわけ朝鮮半島の非核化に共通利益を有する日・米・韓・中・露の強い連携が不可欠となる。今後、米国などが従来イランに課してきたような厳しい金融制裁に至るか否かも、注目されなければならない。

 制裁が実施されても中国等が経済協力関係を継続しているようでは、限定的な効果しかない。関係国が厳しい制裁措置を一致して実施し、団結して北朝鮮と交渉にあたらない限り、解があるとは思えない。同時に、北朝鮮の反発や万が一の有事に備え、日米韓は共同の危機管理計画を準備しておく必要があるのは論をまたない。