2015年8月11日、中央銀行は人民元の対ドル中間レートを6.2298と発表、1日の下げ幅が1.9%にも達し、史上最安値を更新した。この後、人民元レートは多少戻したものの、11月に入って米連邦準備制度理事会(FRB)の利上げを見込み、さらに元安方向に振れた。2016年1月に入ると、6.7に近づき、1月18日には、6.5840に戻ったものの、この5ヵ月間に5%もの元安となっている。
この元安は、ちょうど中国の株安、中国経済の減速と重なり、金融不安を引き起こし、もう一段と元安になるのではないかと思われている。元が1割安くなることはないと金融関係者は繰り返しているものの、市場はあまりそれを信用していない。
株安については先週のコラムでサーキットブレーカー制度の不備を指摘したが、今回は元安の影響を分析する。注目はこの元安が、中国の輸出を好転させるかどうかだ。好転がないとすれば、中国が積極的に元を安くさせることはないだろう。
日本の経験によれば
通貨安は輸出を拡大しない
民生証券の管清友・李奇霖両氏が2015年12月29日に発表したレポートによれば、「短期的にみれば、元安はある程度、輸出を後押しする作用があるだろうが、世界的な景気の下落傾向、輸出の為替相場の変動に対する柔軟性の低さ、低コストという強みの消失、海外需要が楽観視できないなどの要素により、中国の輸出はやはり低迷を続けることだろう」とのことである。
このレポートによれば、1997年から今までの人民元の実際の有効為替レートの前年同期比と輸出の前年同期比の増加速度との関係からみれば、人民元の実際の有効為替レート前年同期比は輸出の増加速度より半年ほど先んじて変化している。しかし、世界の経済情勢や貿易条件の変化により、元安が輸出を促進する作用は弱まっている。
日本の経験から見れば、2012年以降、円の下げ幅は40%前後となっているが、日本は輸入超過を続け、輸出はあまり拡大してこなかった。ここからも、為替レートの安値が貿易条件の改善にすぐさま効果を及ぼすわけではなく、2者の間の高度な関係性が因果関係を持つのか、それとも2者のマクロ経済情勢が反映しているためなのかは、やはり熟考に値する。
日本を見る限り、人民元安も中国の輸出拡大には貢献しないだろうと思われる。